ケサンの戦い

ケサンの戦い：ベトナム戦争における転換点

ケサンの戦い（1968年1月～4月）は、ベトナム戦争における重要な戦闘の一つであり、アメリカ軍と北ベトナム軍がケサン戦闘基地を巡って激戦を繰り広げました。この戦いは、その後の戦争の行方やアメリカ国内の世論に大きな影響を与えました。

背景

ケサン戦闘基地は、南北ベトナムの非武装地帯（DMZ）から南へ25キロメートルの場所に位置していました。アメリカ軍は、この基地を北ベトナムからの侵攻を防ぐための拠点として利用していました。また、基地の近くには、北ベトナム軍の補給路であるホーチミン・ルートがあり、アメリカ軍はこれを破壊することも目的としていました。ケサン基地は、1,200メートルの滑走路を備え、周囲には4つの前哨陣地が設けられていました。

一方、北ベトナム軍は、テト攻勢に先立ち、ホーチミン・ルートの安全確保とアメリカ軍を南ベトナムの人口密集地域から引き離すことを目指していました。そのため、正規軍2個師団を投入し、ケサン基地を包囲殲滅しようとしました。

戦いの経過

1967年4月、5月には小規模な衝突がありましたが、本格的な戦闘は1968年1月中旬に始まりました。北ベトナム軍は、第304師団と第325師団を投入し、基地を包囲しました。基地を守備していたのは、アメリカ海兵隊2個連隊と南ベトナム政府軍のレンジャー部隊でした。北ベトナム軍は、基地の西と北から攻め込み、アメリカ軍は補給路を断たれ、空からの補給に頼らざるを得なくなりました。

北ベトナム軍は、人的被害を顧みず積極的に攻撃を続け、2月中旬には予備兵力を投入し、戦力比が一時4倍にもなりました。対するアメリカ軍は、物資の空輸を行いながら、空軍、海軍、海兵隊の航空部隊が協力してB-52戦略爆撃機による大規模な空爆作戦「ナイアガラ」を実施しました。これにより、北ベトナム軍に大きな損害を与えました。4月に入ると、アメリカ軍は地上からの解放作戦「ペガサス」を発動し、北ベトナム軍をこの地域から撤退させることに成功しました。

戦いの結果と影響

ケサンの戦いは、北ベトナム軍がアメリカ軍を南ベトナムの人口密集地域から引き離すという戦略的な目的を達成した点で、北ベトナム軍の勝利と見なされています。しかし、アメリカ軍も基地を死守し、戦略爆撃により北ベトナム軍に大きな損害を与えました。アメリカ軍は、ケサン基地を維持するコストが高いことや、塹壕に対する航空爆撃の効果が低いことから、7月には基地を破壊して撤収しました。

ケサン基地の放棄は、テト攻勢とともにアメリカ国民に大きな衝撃を与え、アメリカ国内でベトナムからの撤退を求める声が高まるきっかけとなりました。この戦いは、ベトナム戦争の転換点となり、その後の戦争終結への動きを加速させたと言えるでしょう。

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