テト攻勢

テト攻勢とは

テト攻勢（Tet Offensive）は、1968年1月のベトナム戦争において、北ベトナムと南ベトナム解放民族戦線が行った大規模な奇襲攻撃です。この攻撃は南ベトナムやアメリカに対して行われ、特に旧正月であるテトの時期に行われたため、衝撃的な影響をおよぼしました。テトの期間は通常、南北両軍の間で暗黙の休戦が行われる慣習が存在しましたが、1968年には両軍の間でこの慣習が破られ、北ベトナム側は計画的に攻撃を決行しました。

攻撃の背景と準備

北ベトナムは、攻撃の計画を7ヶ月間かけて準備しました。彼らは各都市に浸透し、戦闘員を私服で送り込み、武器を集積するなどの用意を整えました。攻撃は1968年1月30日の未明に開始され、南ベトナムの主要都市やアメリカの軍事施設が奇襲の標的となりました。テト期間中に攻撃が行われたことにより、南北双方は互いに休戦協定の違反を非難し合うことになります。

戦闘の展開

テト攻勢の最中、ベトナム人民軍と解放戦線は南ベトナム全土で攻勢を開始し、サイゴンやフエなどの主要都市を含む34の省都が攻撃を受けました。特にサイゴンではアメリカ大使館が解放戦線によって一時占拠され、大統領官邸や海軍司令部なども狙われました。

攻撃側の士気は高く、サイゴンでは多くの拠点が一時的に掌握されますが、その後アメリカ軍と南ベトナム軍の反撃によって次第に奪還されていきました。攻撃を指揮した北ベトナム軍の総司令官ヴォー・グエン・ザップは当初、攻勢に反対の立場を示しましたが、他の幹部の意向を受け入れる形で作戦に参加しました。

フエ市の状況

フエ市では、解放戦線が市を掌握していた期間中に、マスコミや住民の目撃情報から、多数の死体が発見されました。この中には、解放戦線による処刑や残虐な殺され方をした者が多く含まれていたとされます。この事件は南ベトナム側の反共宣伝に利用され、大きな影響を及ぼしました。

テト攻勢の結果

テト攻勢の結果、南ベトナムやアメリカ側は多大な損害を受けましたが、それにもかかわらず北ベトナム側も多くの犠牲を強いられました。攻撃の瞬間的成功にもかかわらず、結果的に南ベトナム解放民族戦線は期待していた市民の支持を得られなかったため、軍事的には失敗と見なされました。しかし、アメリカ国民に衝撃を与えたこの攻撃は、アメリカ国内の反戦運動を活発化させ、アメリカ政府の戦争への姿勢に転機をもたらしました。

アメリカ大統領リンドン・ジョンソンは、次期大統領選への不出馬を表明し、北爆を停止する決定を下しました。テト攻勢は、ベトナム戦争の流れを大きく変えた重要な出来事として、今なお語り継がれています。

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