ケネディ・センター名誉賞

ケネディ・センター名誉賞：アメリカ舞台芸術の殿堂

ケネディ・センター名誉賞は、舞台芸術を通じてアメリカ文化に多大な貢献をした人物に贈られる、アメリカ合衆国で最も権威のある賞の一つです。1978年から毎年開催され、ワシントンD.C.にあるジョン・F・ケネディ・センター歌劇場で、華やかな授賞式が行われます。

歴史

この賞は、劇作家・映画プロデューサーのジョージ・スティーヴンス・ジュニアとダンサーのニック・ヴァノフによって創設されました。きっかけは、アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)の設立10周年記念イベントの依頼でした。ケネディ・センターの創立会長ロジャー・L・スティーブンスが、AFIの創立会長であるジョージ・スティーブンス・ジュニアにイベント開催を依頼し、ジョージがアイザック・スターンに協力を依頼、テレビ局CBSへの売り込みを経て、第1回の授賞式が実現しました。

ジョージ・スティーブンス・ジュニアは2014年まで授賞式のプロデューサー兼共同脚本家を務め、その後、制作権をケネディ・センターに売却しました。

選考プロセス

受賞者の選考は、ケネディ・センターの評議員と、過去の受賞者や著名なアーティストで構成される諮問委員会によって行われます。一般からの推薦も受け付けており、音楽、ダンス、演劇、オペラ、映画、テレビといった幅広い分野における卓越した業績に基づいて受賞者が選ばれます。選考結果は通常7月から9月の間に発表され、その年のアメリカ文化を代表する人物が選ばれます。

授賞式典

授賞式典は週末の2日間に渡って開催され、招待者のみが参加できます。式典は単なる授賞式にとどまらず、理事長の昼食会、国務省の晩餐会、ホワイトハウスのレセプション、そしてケネディ・センターでのガラ公演と夕食会など、様々なイベントが催されます。

土曜日の昼食会では、理事長が受賞者を歓迎し、その夜には国務省でレセプションと晩餐会が開催されます。ここでは国務長官が司会を務め、受賞者には理事長から賞のメダルが授与されます。メダルには虹色の帯がつけられており、舞台芸術における多様な才能を象徴しています。日曜日の夕方には、大統領とファーストレディが主催するホワイトハウスでのレセプションが行われ、その後、ケネディ・センターで受賞者を称えるガラ公演と夕食会が開催されます。

過去には、大統領がガラ公演に出席しないこともありましたが、近年では大統領夫妻の出席が恒例となっています。ただし、政治的な状況によっては、大統領夫妻が欠席することもあります。

この授賞式の模様は、生中継はされませんが、編集されたものがクリスマスから新年の間にCBSで放送され、多くの人々に感動を与えています。

受賞者たち

ケネディ・センター名誉賞は、主に個人に贈られますが、デュオやグループに授与されることもあります。過去には、ヒューム・クローニンとジェシカ・タンディ、ポール・ニューマンとジョアン・ウッドワードといった俳優夫婦や、ザ・フー、レッド・ツェッペリン、イーグルスといった音楽グループも受賞しています。また、1998年にビル・コスビーに贈られた賞は、後に取り消されています。

2018年には、ミュージカル『ハミルトン』のクリエイターチームに、カテゴリーを超えた作品を生み出した先駆的なクリエイターに贈られる賞が初めて授与されました。2019年には、テレビ番組『セサミストリート』が初のテレビ番組としての受賞を果たし、話題となりました。

ケネディ・センター名誉賞は、アメリカの舞台芸術界における最高の栄誉として、その歴史と伝統を未来へと繋いでいます。

主な受賞者一覧

（1978年から2021年までの受賞者リストは省略）

その他

過去には、受賞を辞退したり、延期になったりしたケースも存在します。ピアニストのウラディミール・ホロヴィッツは、受賞条件を巡って授賞が撤回され、女優のキャサリン・ヘップバーンは当初受賞を辞退しました。ポール・マッカートニーは、2002年に受賞者に選ばれましたが、個人的な事情で出席できず、その後2010年に改めて受賞しました。メル・ブルックスは、ジョージ・W・ブッシュ大統領の政策に反発して受賞を拒否し、バラク・オバマが大統領になった2009年に受賞しています。

ケネディ・センター名誉賞は、単なる賞というだけでなく、アメリカ文化の多様性と創造性を象徴するものであり、その輝きはこれからも色褪せることはないでしょう。

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