ケプラー式望遠鏡

ケプラー式望遠鏡：天文学の発展を支えた屈折望遠鏡

ケプラー式望遠鏡は、凸レンズを対物レンズと接眼レンズの両方に用いた屈折望遠鏡の一種です。ガリレオ・ガリレイが発明したガリレオ式望遠鏡とは異なり、ケプラー式望遠鏡は倒立像を結びます。しかし、その優れた光学特性から、天文学の発展に多大な貢献を果たしました。

ケプラー式望遠鏡の発明と発展

1611年、ヨハネス・ケプラーは凸レンズを接眼レンズに用いた望遠鏡の設計図を発表しました。しかし、ケプラー自身は望遠鏡を製作しませんでした。その後、1615年にクリストフ・シャイナーがケプラーの設計に基づいた望遠鏡を製作し、天体観測に用いたことが知られています。この望遠鏡が、現在のケプラー式望遠鏡の原型となりました。

ケプラー式望遠鏡の機構と特徴

ケプラー式望遠鏡は、対物レンズによって集められた光を、接眼レンズによって拡大して観察する仕組みです。対物レンズと接眼レンズの両方とも凸レンズであることが、この望遠鏡の大きな特徴です。

ガリレオ式望遠鏡では、倍率を上げると視野が狭くなるという欠点がありました。しかし、ケプラー式望遠鏡では、倍率を上げても視野がそれほど狭くならないため、より広い範囲の観測が可能になります。さらに、対物レンズの焦点面にはっきりとした像が結ばれるため、この焦点面に糸を張ることで十字線や測微尺として利用でき、天体の位置測定など、精密な観測に役立ちました。

天体観測においては、像が倒立していることは大きな問題ではありません。地上観測を行う際には、正立プリズムを挿入することで正立像を得ることができ、地上望遠鏡としても広く利用されています。

ケプラー式望遠鏡の長所と短所

ケプラー式望遠鏡は、その優れた光学性能と比較的簡単な構造から、長年にわたって広く愛用されてきました。特に小型の望遠鏡では、現在でも最も普及している形式の一つです。

しかし、ケプラー式望遠鏡は大型化が難しいという欠点があります。望遠鏡の口径が大きくなると、対物レンズの厚みが増し、光線の透過率が低下するためです。そのため、大型の望遠鏡では、ニュートン式望遠鏡などの反射望遠鏡にその地位を譲ることとなりました。

ケプラー式望遠鏡の現代における意義

現在でも、ケプラー式望遠鏡は小型望遠鏡として広く利用されています。その簡潔な構造と高い光学性能は、多くのアマチュア天文家にとって魅力的なものです。また、近年では、ケプラー式望遠鏡の設計思想を応用した新しいタイプの望遠鏡も開発されており、天文学の発展に今後も貢献していくと考えられています。

参考文献

吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・屈折編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28908-1

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