ケプラー186e

太陽系外惑星「ケプラー186e」（Kepler-186e）は、地球からはくちょう座の方向におよそ492光年離れた宇宙空間に位置する天体です。この惑星は、太陽よりも小型で表面温度が低い「赤色矮星」である恒星「ケプラー186」の周囲を公転する惑星系の一部であり、現在までに確認されている5つの惑星のうちの一つです。ケプラー186系は、特に系外惑星探査において注目されており、地球サイズの惑星が複数存在し、その中には生命居住可能領域、すなわちハビタブルゾーン内に位置する惑星（ケプラー186f）も含まれることが知られています。ケプラー186eは、この惑星系の内側から5番目、中心星に近い方から数えてb, c, d, e, fと並ぶ惑星列のうち、「e」にあたる軌道を周回しています。

サイズと構成の推定
ケプラー186eの物理的な大きさは、観測データからその半径が地球の約1.33倍であると推定されています。この比較的小さなサイズは、ケプラー186eが木星や海王星のようなガス主体の巨大ガス惑星や氷惑星ではなく、地球や火星のような岩石質の惑星である可能性が極めて高いことを示唆しています。密度に関する詳細な情報はまだ得られていませんが、理論モデルに基づけば、ケイ酸塩岩石や金属を主成分とする固体の地殻を持つ天体であると考えられています。地球サイズの岩石惑星候補は、太陽系外生命探査における主要なターゲットの一つですが、その環境が生命の生存に適しているかどうかは、軌道や中心星の性質に大きく左右されます。

軌道特性と表面環境
ケプラー186eは、その中心星である赤色矮星ケプラー186から非常に近い軌道を公転しています。中心星からの平均距離は約0.129天文単位（AU）であり、これは地球と太陽の距離（1AU）の約8分の1に相当する近さです。このような近い距離を周回しているため、ケプラー186eの公転周期は極めて短く、わずか約24.2日（およそ3週間）で恒星の周りを一周します。中心星からの距離が近いということは、惑星が受け取るエネルギー（恒星放射）の量が非常に大きいことを意味します。その結果、ケプラー186eの表面は、地球と比較してはるかに高温であると予測されています。詳細な表面温度は、大気の有無や組成に依存しますが、一般的に液体の水が存在しうる温度範囲を大きく超えていると考えられています。

生命居住の可能性と環境
ケプラー186eが中心星から受ける多大なエネルギーは、その環境を生命が存在するには極めて過酷なものにしています。予測される高温のため、惑星表面に液体の水が安定して存在する可能性は非常に低いと考えられています。地球型の生命が存在するためには、液体の水が必要不可欠であるとされているため、ケプラー186eは、生命が誕生・進化していくための条件を満たしていないと見られています。これは、ケプラー186eが、惑星系内のハビタブルゾーンよりもさらに内側、恒星に近い「ホットゾーン」と呼ばれる領域に位置づけられるためです。

発見経緯
ケプラー186eの存在は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用していたケプラー宇宙望遠鏡による観測データから確認されました。ケプラーミッションの主な目的は、恒星のハビタブルゾーン内にある地球サイズの惑星を発見することでした。ケプラー望遠鏡は、惑星が恒星の手前を横切る際に起こる恒星のわずかな明るさの減少、すなわち「トランジット」現象を精密に測定することで惑星を検出します。ケプラー186eも、このトランジット観測によってその存在が明らかにされた太陽系外惑星の一つであり、ケプラー186系の他の姉妹惑星（b, c, d, f）と同時期、またはその後に確認されました。この発見は、太陽系外における多様な惑星系の存在とその特徴を理解する上で重要な知見を提供しています。

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