ケプラー37b

ケプラー37b

ケプラー37b（Kepler-37b）は、地球からおよそ210光年離れた位置にある恒星、こと座のケプラー37を公転する太陽系外惑星の一つです。この天体は、発見当時において確認されていた太陽系外惑星の中で、直径・質量ともに最も小さいことで注目されました。そのサイズは、地球の月にわずかに勝る程度です。

軌道の特性

ケプラー37bは、ケプラー37の周囲で発見された3つの惑星のうち、最も内側を回る惑星です。恒星からの距離は非常に近く、わずか1501万キロメートル（約0.1003天文単位）しか離れていません。これは太陽系における水星軌道よりも内側に位置するほどで、その結果、公転周期も極めて短く、約13日と8時間48分55秒（約13.3日）でケプラー37の周りを一周します。

物理的な性質

この惑星は、恒星の手前を通過する際に光をわずかに遮る「トランジット法」によって発見されました。ケプラー37bが恒星面を通過する際の明るさの減少率（約0.0119%）を精密に測定することで、その大きさが推定されました。その結果、直径が地球のわずか約0.303倍しかないことが明らかになったのです。これは、当時確認されていた太陽系外惑星の中で最小の直径であり、これまでの記録（ケプラー42dの地球の約0.57倍）を大きく更新しました。

具体的な数値では、ケプラー37bの直径は約3870キロメートルです。これは、太陽系で最も小さな惑星である水星（直径約4879.4キロメートル）よりも小さく、一方で地球の月（直径約3474.3キロメートル）と比べるとわずかに大きいサイズにあたります。通常、これほど小さな減光率の観測は、恒星自体の明るさ変動と区別するのが困難ですが、ケプラー37は比較的安定した明るさを持つ恒星であったため、微弱な信号を検出することが可能でした。

また、前述の通り、ケプラー37から極めて近い距離にあるため、その表面温度は非常に高くなります。ケプラー37自体は太陽よりわずかに表面温度が低い恒星ですが、ケプラー37bの表面温度は摂氏約427度（700ケルビン）にも達すると推定されています。この温度は亜鉛を溶かすのに十分なほど高温です。また、惑星の弱い重力と恒星からの強い放射のため、太陽系における水星と同様に大気はほとんど存在しないと考えられています。このような過酷な環境では、地球型の生命が存在することは考えられません。

質量についても、地球の約0.01倍以上と推定されており、これは当時確認されていた太陽系外惑星の中で最小の質量記録でした（これまでの最小記録はPSR B1257+12 Aの地球の約0.020倍）。

観測の意義

ケプラー37bの発見は、その極めて小さなサイズにもかかわらず、大きな科学的意義を持っています。これまでは恒星のすぐ近くに巨大な「ホットジュピター」のような惑星が見つかることが多かった星系にも、地球や月のような小さな惑星が存在しうることを示したからです。

ケプラー37bの正確な直径を推定するためには、恒星ケプラー37自体のサイズを知る必要がありました。これは、恒星の内部で発生する音波を観測し、その内部構造やサイズを調べる「星震学」という手法を用いて測定されました。この星震学は、従来、太陽の2倍以上の大きさの恒星に主に適用されていましたが、ケプラー宇宙望遠鏡の非常に精密な観測データにより、太陽よりやや小さいケプラー37（直径：太陽の約0.770倍、質量：太陽の約0.803倍）に対しても適用が可能となり、そのサイズが正確に把握されたのです。

この発見は、太陽系外惑星の多様性を理解する上で重要な一歩となり、地球サイズの惑星を発見する技術の進歩を示す事例として記憶されています。

もう一度検索