ケプラー70

ケプラー70

概要
ケプラー70（KOI-55）は、地球から約3,850光年離れた、はくちょう座の方向に位置する恒星です。

恒星の特徴
この星は1986年に発見され、当初「KPD 1943+4058」と呼ばれていました。ケプラー70は、太陽のような星が赤色巨星段階を経てさらに進化した、極水平分枝星、すなわち高温準矮星（スペクトル分類sdB）と考えられています。中心部ではヘリウム核融合が行われている一方、進化の過程で外層の大部分を失っており、そのため質量は太陽の半分程度ながら、表面温度は約28,000ケルビンと非常に高温です。半径は太陽の約2割とコンパクトな星です。

惑星発見とその後の議論
2011年、NASAのケプラー宇宙望遠鏡の観測データから、ケプラー70の周囲に2つの太陽系外惑星（ケプラー70b、ケプラー70c）が存在する可能性が報告されました。この発見の根拠とされたのは、惑星が恒星の光を反射することによって生じる微弱な周期的な光の変動でした。

報告された惑星は、どちらも地球より小さいサイズとされました。特にケプラー70bは、半径が地球の約0.759倍と、当時発見されていた系外惑星の中で最小級の一つでした。これらの惑星は中心星から非常に近い軌道を回っているとされ、その距離は中心星の半径よりわずかに大きい程度でした。この近さから、これらの天体はかつてケプラー70が赤色巨星だった頃に星の外層に飲み込まれた可能性があり、もしそうであれば、元々は木星のような巨大ガス惑星だったものが、中心星に近づきすぎて外層を剥ぎ取られ、現在の地球サイズの核だけが残った姿であるという仮説も提唱されました。

しかし、その後の研究によって、ケプラー70の周囲に惑星が存在するという説には疑問が呈されるようになりました。2015年および2019年に行われた詳細な分析では、2011年の報告で惑星の証拠とされた周期的な光の変動は、惑星によるものではなく、中心星であるケプラー70自身の脈動による可能性が非常に高いことが指摘されました。ケプラー70のような高温準矮星は、その物理的な特性から定期的な膨張・収縮（脈動）を示すことが知られており、この星の明るさの変動パターンが、惑星の存在を示す信号と誤認されたと考えられています。

結論
したがって、現時点では、ケプラー70の周囲に惑星が存在するという説は広く受け入れられておらず、検出された信号は恒星自身の脈動に起因するという見解が主流です。ケプラー70は、系外惑星探査の初期において惑星候補が報告されながらも、その後の精密な研究によってそれが否定された事例として認識されています。

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