ケプラー91b

ケプラー91b

ケプラー91bは、太陽系外に位置する惑星であり、進化段階にある赤色巨星ケプラー91の軌道上を周回しています。この惑星の発見は、ケプラー宇宙望遠鏡が収集したデータの綿密な分析から始まりましたが、その存在を確認するまでには特有の課題がありました。

発見とその確認

この惑星の存在は、恒星の光度変化を観測する「トランジット法」によって最初に示唆されました。惑星が主星の手前を通過する際に生じるわずかな減光を捉えたのです。しかし、当初、この光度曲線の変化が惑星によるものなのか、あるいは別の天体現象によるものなのか、その判断は容易ではありませんでした。特に、主星であるケプラー91が持つ比較的低い密度と、惑星ケプラー91bがその重力によって主星の形状を楕円形に歪めているという特殊な状況が、観測データを複雑にしていました。

恒星が惑星の重力で変形すると、その見かけの明るさもわずかに変化します。ケプラー91bの場合、この恒星の楕円体変形によって引き起こされる光度変化が、観測された全体の明るさの変動の3分の1以上を占めていることが判明しました。この特異な光度変化の様子を詳細に解析することで、逆に惑星が主星に及ぼす重力の大きさを推定することが可能となり、その結果として惑星の質量が求められました。光度変化には、トランジット時だけでなく、惑星表面が主星の光を反射することによる明るさの変化も寄与しています。

発見後の再調査では、惑星自身が熱を発して輝いている「発光体」である可能性も検討されました。しかし、視線速度法のデータや光度曲線の再分析を通じて、ケプラー91bが自ら発光しているわけではなく、単純に主星の光を反射している天体であることが確認され、惑星としての性質が確立されました。

特徴

ケプラー91bは、その物理的性質においていくつかの興味深い特徴を持っています。質量は太陽系最大の惑星である木星と比較して約12%小さく、一方で半径は約38%大きいことが観測から分かっています。この質量に対して大きな半径を持つことから、その平均密度は非常に小さく、水の約半分程度であると推定されています。これは、惑星の組成や内部構造が一般的な巨大ガス惑星とは異なる可能性を示唆しています。

軌道についても見てみましょう。ケプラー91bは、主星ケプラー91の非常に近くを公転しており、その公転周期は約6.25地球日と短いです。軌道面が観測者に対して傾いており、その傾斜角は約68.5度と比較的大きいため、本来であればトランジット現象を観測するのが難しい配置でした。しかし、主星からの軌道長半径が十分に短かったために、幸運にもトランジットを捉えることができ、その存在が確認されました。

将来の運命

ケプラー91bは、進化の進んだ赤色巨星のごく近くを公転しているため、その将来は予測されています。現在の軌道では、およそ5500万年以内という比較的近い将来に、膨張し続ける主星ケプラー91に飲み込まれて消滅すると考えられています。

トロヤ惑星の可能性

さらに興味深いことに、ケプラー91bの光度曲線の一部の分析から、この惑星の軌道上に別の小規模な天体、すなわち「トロヤ惑星」が存在する可能性も指摘されました。光度曲線の特定のタイミングで、わずかな減光が観測されたことが、この推測の根拠となりました。しかし、現在の研究段階では、この観測された減光は偽陽性、つまり実際にはトロヤ惑星の存在を示すものではない可能性が高いと結論づけられています。現時点では、ケプラー91bに伴うトロヤ惑星の確固たる証拠は見つかっていません。

ケプラー91bは、恒星と惑星の重力的な相互作用が観測可能な形で現れる稀有な例であり、進化途上の恒星系における惑星の性質や運命を理解する上で重要な研究対象となっています。

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