ケベス祭

ケベス祭：炎と信仰が織りなす国東の奇祭

ケベス祭は、大分県国東市国見町櫛来の岩倉八幡社（櫛来社）で、毎年10月14日に行われる勇壮な火祭りです。その起源や由来は謎に包まれており、地元では「九月祭」とも呼ばれて親しまれてきました。2000年12月には、その独特な文化性が評価され、国の選択無形民俗文化財に選ばれています。

火の粉を浴びて無病息災

祭りの舞台となるのは、岩倉八幡社の境内です。そこに高く積み上げられたシダの山を舞台に、白装束に身を包んだ「トウバ」と、奇怪な面をつけた「ケベス」が激しい攻防を繰り広げます。

「トウバ」は燃え盛るシダの山を守る役割を担い、「ケベス」は、そのシダの山に突入しようと試みます。「ケベス」は何度も突入を試み、9度目の挑戦でついに成功。手に持った棒でシダの山をかき回し、あたりに火の粉をまき散らします。

その後は、「トウバ」も火のついたシダを持って境内を走り回り、参拝者を追いかけるという、エキサイティングな展開となります。この時、火の粉を浴びると無病息災のご利益があると言い伝えられており、多くの人々が火の粉を浴びようと境内を駆け回ります。

トウバとケベスの役割

「トウバ」は、神社の氏子である10の集落が、年ごとに輪番で務めます。この「トウバ」は、「当場」という字が当てられることもあります。

一方、「ケベス」の由来ははっきりとは分かっていません。「蹴火子（けびこ）」が転じたという説が有力ですが、謎に包まれています。

ケベスの語源をめぐるミステリー

興味深い説として、「ケベス」という言葉がヘブライ語で「子羊」(כֶבֶשׂ)を意味するというものがあります。このことから、日ユ同祖論と関連付け、古代イスラエルの失われた10支族や秦氏との繋がりを指摘する研究者も存在します。真偽は不明ですが、ケベス祭の神秘性をより一層深める要素となっています。

岩倉社（櫛来社）について

ケベス祭が執り行われる岩倉社は、正式には櫛来社と称します。元々は櫛来地区の氏神として崇敬されていましたが、寛平元年（889年）に宇佐神宮から分霊を勧請し、より広範な信仰を集めるようになりました。

祭神は、帯中津日子命（仲哀天皇）、息長帯日売命（神功皇后）、品陀和気命（応神天皇）の三柱に加え、奥津嶋姫命、市寸島比売命、多岐津比売命の宗像三女神です。これらの神々が、地域の安寧と繁栄を見守っています。

ケベス祭は、その勇壮な火の祭りとしての側面と、古代からの謎めいた伝承が入り混じった、非常に魅力的な祭りです。一度訪れれば、その熱気と神秘的な雰囲気に圧倒されることでしょう。

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