ケルス宮殿

ケルス国立宮殿（Palácio Nacional de Queluz）は、ポルトガル、シントラ近郊のケルスに位置する18世紀の壮麗な宮殿であり、その華麗さから「ポルトガルのヴェルサイユ」とも称されています。この宮殿は、バロックとロココが融合した建築様式と、美しい庭園が特徴です。

建設は、ジョアン5世の治世下の1747年に、ポルトガル人建築家マテウス・ヴィセンテ・デ・オリヴェイラの指揮のもとで始まりました。オリヴェイラは、1755年のリスボン地震後の首都再建に携わるため宮殿の建設を一時中断しますが、その間にいくつかの中庭、庭園に面した儀式用のファサード、そして聖フランシスコの塔などを設計しました。

その後、フランス人建築家ジャン・バティスト・ロビヨンが2代目の建築家として宮殿の建設を引き継ぎました。彼はロココ様式を取り入れ、庭園、建物、そして内装を設計しました。ロビヨンは、ヨーロッパの他の宮殿でよく見られるU字型の平面図を採用し、美しい階段が特徴的な栄誉の間を設計しました。

宮殿内部の各部屋（王座の間、大使の間、音楽の間など）は、ロココ絵画、金箔を施した木工細工、そして美しいタイルで豪華に装飾されています。特に礼拝堂は、ポルトガル人彫刻家シルヴェストレ・ファリア・ロボによる金箔張りの木工装飾が施され、見る者を圧倒します。

庭園もまた、ケルス宮殿の魅力の一つです。多彩色のポルトガル・タイルや噴水に加え、イタリアやイングランドから運ばれた壺型の装飾品や像が配置され、庭園を彩っています。

1794年、マリア1世の時代に、ケルス宮殿は正式に王宮となりました。また、『マリア1世の楼閣』は、1785年から1792年にかけてマヌエル・カエタノ・デ・スーザによって設計され、現在はポルトガルを訪問する外国の元首を迎えるための迎賓館として使用されています。

ケルス国立宮殿は、その壮麗な建築、豪華な内装、そして美しい庭園を通じて、18世紀のポルトガルの繁栄と芸術的センスを今に伝える貴重な文化遺産です。

参考文献
* 桐生操監修 著、レッカ社 編『ヨーロッパの「古城・宮殿」がよくわかる本』PHP研究所〈PHP文庫〉、2010年。ISBN 978-4-569-67468-1。

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