ケルチ海峡

ケルチ海峡：黒海とアゾフ海を結ぶ要衝

ケルチ海峡は、黒海とアゾフ海を繋ぐ海峡であり、西にはクリミア半島、東にはロシアのタマン半島が位置しています。この海峡は、歴史的にも重要な場所であり、現代においても様々な出来事が起こっています。

歴史的背景

紀元前438年には、この一帯にギリシア植民都市が発展し、ボスポロス王国が成立しました。この王国は、ケルチ海峡周辺の重要な交易拠点として繁栄しました。長い歴史の中で、この海峡は様々な勢力の支配下に置かれてきました。

インフラ

主要港としては、クリミア半島側のケルチやロシア側のノヴォロシイスクなどがあります。この海峡を横断するインフラとしては、橋とフェリーが存在します。

橋の建設:

独ソ戦時にナチス・ドイツが建設を開始したものの崩落した橋が、かつて存在しました。その後、ロシアはクリミアの実効支配を強めるため、タマン半島とケルチを結ぶクリミア大橋を建設しました。この橋は、全長19kmにも及び、自動車道と鉄道が併設されています。自動車道は2018年に、鉄道は2019年にそれぞれ開通しました。総工費は2280億ルーブルに達しています。

フェリー:

2017年時点では、タマニの北にあるチュシカ港とケルチを結ぶフェリーが1時間半に1便出ており、30分で両岸を結んでいます。

国境紛争

1991年のソビエト連邦解体後、ケルチ海峡を巡りロシアとウクライナの間で国境紛争が発生しました。1997年には両国間で友好条約が結ばれ、海峡にあるトゥーズラ島はウクライナ領とされましたが、ロシアは海峡の主要な航路を実効支配するウクライナに対して不満を抱いていました。

2003年には、ロシアがトゥーズラ島に堤防を建設しようとしたため、ウクライナが軍を派遣するなど、緊張が高まりました（トゥーズラ岬の紛争）。2010年には、両国間でケルチ海峡に橋を建設する合意がなされました。2012年には、トゥーズラ島の領有権がウクライナ側にあることを再確認し、海峡における船舶の通航を両国で共同管理することで合意に達しました。

ロシアによるクリミア併合後の状況

2014年のロシアによるクリミア併合後、ケルチ海峡は事実上ロシアの内水域となりました。2018年には、ロシア国内事業としてケルチ海峡大橋が開通しました。また、同年に黒海からアゾフ海に進入しようとしたウクライナ海軍の軍艦3隻がロシアの海岸警備隊に拿捕される事件（ケルチ海峡事件）も発生しました。

2021年には、ロシアがケルチ海峡における他国軍艦の無害通航を半年間認めないと発表し、ウクライナ側が反発するなど、依然として緊張状態が続いています。

海難事故

ケルチ海峡では、過去にいくつかの海難事故が発生しています。

2007年の嵐による事故:
2007年11月11日には、非常に強い嵐により4隻の船が沈没、6隻が座礁、2隻のタンカーが損傷するという大規模な事故が発生しました。この事故により23人が死亡したほか、大規模な原油流出や硫黄などの物資が流出しました。

2019年の液化天然ガスタンカー火災:
2019年1月21日には、タンザニア船籍の液化天然ガス（ＬＮＧ）タンカー2隻で火災が発生しました。

2024年のタンカー座礁事故:
2024年12月15日には、石油タンカー2隻が嵐により座礁し、石油流出を起こしました。

まとめ

ケルチ海峡は、歴史的に重要な場所であり、様々な紛争や事故が起こっています。インフラとしては橋やフェリーが存在し、この海峡が交通や貿易において重要な役割を果たしていることがわかります。今後も、この海峡は国際的な注目を集め続けるでしょう。

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