ケルビネーター

ケルビネーター：アメリカ家電の歴史を彩る老舗メーカー

ケルビネーター社は、1914年、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイトで創業した歴史ある家電メーカーです。社名は、絶対零度の概念で知られるウィリアム・トムソン（ケルビン卿）に由来しており、その名が示す通り、当初から冷蔵庫を中心とした製品開発に注力しました。

発展と買収劇：自動車産業との連携から家電業界の巨頭へ

創業からしばらくは冷蔵庫の製造販売に専念していましたが、1926年にはレオナルド社を買収し事業を拡大。その後1937年には、当時勢力を伸ばしていた自動車メーカー、ナッシュ・モーターズと合併し、「ナッシュ＝ケルビネーター・コーポレーション」を設立。自動車産業との連携は、ケルビネーター社の更なる発展に大きく貢献しました。

ナッシュ・ケルビネーター社は、その後も積極的な買収戦略を展開。1952年には洗濯機メーカーのアルトフェル・ブラザーズ社を買収するなど、事業領域を拡大しました。1954年にはハドソン・モーター・カー・カンパニーと合併してアメリカン・モーターズ・コーポレーションとなり、自動車業界においても大きな存在感を示しました。

技術革新においてもケルビネーター社は先駆的な役割を果たしました。1950年代には世界で初めて霜取り不要の両開きドア式冷蔵庫を開発・販売し、業界に衝撃を与えました。さらに1960年代には、キッチンのデザインに合わせてカスタマイズ可能な「ピクチャーフレーム・ドア」冷蔵庫を発表するなど、常に時代のニーズを先取りした製品開発を続けてきました。

複数企業との合併とエレクトロラックス傘下へ

1968年には、ケルビネーター部門はホワイト・コンソリデーテッド・インダストリーズ(WCI)に買収されました。WCIはその後も積極的な買収を続け、ウェスティングハウス家電部門、フリッジデール、ギブソン・アプライアンス、タッパンなどを傘下に収め、家電業界における巨大企業へと成長しました。

そして1986年、WCIはスウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスに買収されました。エレクトロラックス傘下となったケルビネーター社は、アメリカ市場では主にフリッジデールブランドを中心に展開されていますが、オーストラリアなどではエレクトロラックス＝ケルビネーターとして活動するなど、グローバルなブランド戦略を展開しています。

ケルビネーター社の歴史的意義

ケルビネーター社は、1世紀以上にわたる歴史の中で、数々の革新的な製品を生み出し、家電業界の発展に大きく貢献しました。ナッシュ・モーターズとの合併など、異業種との連携も成功させ、事業の多角化を進めた点も特筆すべきでしょう。

その歴史は、技術革新と大胆な経営戦略がいかに企業の成長を促すのかを示す好例であり、現代の家電業界に多大な影響を与え続けていると言えるでしょう。現在でも、世界中で多くの家庭で使用され続けているケルビネーター社の製品は、その歴史と技術力の証として、高く評価されています。

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