ケルベロスの肖像

書籍『ケルベロスの肖像』の概要

『ケルベロスの肖像』は、2012年に海堂尊によって発表された長編小説であり、医療ミステリーの代表的な作品とされています。本作は『このミステリーがすごい』大賞を受賞した『チーム・バチスタの栄光』から続く、田口・白鳥シリーズの第6巻であり、同シリーズの完結作でもあります。物語は、2014年に映画化もされています。

基本情報

本作は、ギリシャ神話に由来する「ケルベロス」という三つの頭を持つ番犬から名付けられています。タイトルの「ケルベロスの塔」は「死への入り口」を意味し、物語全体に様々な形で死や医療の闇がテーマとして絡み合っています。また、作品内には著者の他の作品からのキャラクターやストーリーが含まれており、読み進めるごとにその因縁が明らかになっていきます。

ストーリーの背景と展開

物語は、アリアドネ・インシデントと呼ばれる事件から1ヶ月後、つまり7月を舞台にしています。東城大学医学部付属病院では、司法と医療の関係が緊迫しており、田口公平は高階病院長から「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」という脅迫状の調査を依頼されます。この脅迫状に絡む謎は、桜宮市の医療の闇に潜む、2年前に炎上した碧翠院桜宮病院の生き残りに帰結していくことになります。

田口は、脅迫状の内容を解明するため、生き残りの特定調査に着手します。同時に、今まで停滞していたAiセンターの稼働に向けた運営会議も進めることとなるのです。会議には、反対派の意見を取り入れながらも着実に進行し、最終的にはAiセンターが稼働する運びとなります。

しかし、脅迫状が指し示す、来たる8月のシンポジウムの日に、東城大を脅かす事態が発生します。この緊迫した状況の中で、登場人物たちはそれぞれの信念や過去と向き合い、事件の真相に迫ります。

主な登場人物

物語の中心人物である田口公平は不定愁訴外来の責任者であり、白鳥圭輔は医療過誤死関連の専門家です。さらに、高階権太病院長をはじめ、様々なキャラクターたちが物語に登場し、それぞれが物語の展開に深い影響を与えます。特に、白鳥の部下である姫宮香織も重要な役割を果たします。彼女の情報提供が、田口の捜査を加速させる要因となります。

他にも、Aiセンター運営連絡会議に参加する天馬大吉や、医療事故被害者の会の小倉勇一など、話にリアリティを与えるキャラクターが多数登場し、彼らの人間関係や葛藤が物語をより深いものとしています。

結末とメッセージ

『ケルベロスの肖像』は単なるミステリーにとどまらず、医療と司法の緊張関係、倫理的選択、過去の因縁と向き合うことの大切さを描いています。登場人物の成長や他者との関係性を通じて、読者が自ら考えさせられるような結末に導くことで、海堂尊の深い思索が作品全体に織り込まれています。

このように、『ケルベロスの肖像』はそのストーリー性だけでなく、キャラクターの内面や人間関係に深く焦点を当てた作品です。医療をテーマにした作品において、リアリティとフィクションを絶妙に織り交ぜた作品であり、ミステリー好きには必ご覧いただきたい一冊となっています。

もう一度検索