ケル・キャラザース

ケル・キャラザース(1938年生まれ)は、オーストラリア、シドニー出身のモータースポーツ界のレジェンドです。オートバイショップを営む両親の影響を受け、幼少期からオートバイに親しみ、才能を開花させました。

1960年代前半には、125cc、250cc、350cc、そして500ccと、あらゆるクラスでオーストラリア国内チャンピオンの座を獲得。その輝かしい実績を引っ提げ、家族と共にヨーロッパへ渡り、ロードレース世界選手権への挑戦を開始します。当初はアエルマッキのファクトリーチームに所属していましたが、1969年にはベネリへと移籍。ケント・アンダーソンやサンチャゴ・ヘレロら強豪選手との激しいタイトル争いを制し、250ccクラスの世界チャンピオンの栄冠を手にしました。

1970年シーズン終了後、キャラザースは活躍の場をアメリカに移します。ヤマハからのオファーを受け、若き日のケニー・ロバーツの育成に携わることになったのです。1973年には現役レーサーを引退し、USヤマハチームでロバーツのチーフメカニックに就任。その卓越した指導力により、ロバーツは1973年と1974年、2年連続でAMAグランドナショナルチャンピオンに輝きます。

AMAグランドナショナルではダートトラック種目が存在し、ハーレーダビッドソンが優勢でしたが、ヤマハは直接対決を避け、ロードレース世界選手権での成功を目指しました。ロバーツとキャラザースはヨーロッパへ渡り、そしてロバーツは1978年から1980年まで、3年連続で500ccクラスの世界チャンピオンに登りつめます。

1978年、コース習熟のためにロバーツは250ccクラスにも参戦。その際に使用した市販マシンTZ250は、キャラザースの手によってフレームを始めとする多くの部分を改良されたスペシャルマシンでした。このマシンはヤマハの開発ライダーからも高く評価され、次期モデルのフレーム設計に大きな影響を与えたと言われています。

ロバーツ引退後も、キャラザースはエディ・ローソンの500ccタイトル獲得をサポートするなど、第一線で活躍を続けました。1995年まで数々のグランプリチームを渡り歩き、1996年から水上バイクレースのシードゥー・ファクトリーチームに加わり、国内外のタイトル獲得に貢献。1998年には再びモーターサイクルレースの世界へ戻り、モトクロスレースでヤマハのサテライトチームを運営しました。

数々の功績を残したキャラザースは、1985年にオーストラリア・スポーツ殿堂、1999年にはAMAモーターサイクル殿堂入りを果たしています。彼の指導力と技術力は、多くのライダーの成功を支え、モータースポーツ界全体に大きな影響を与えたと言えるでしょう。長年に渡る彼の貢献は、モータースポーツの歴史に永遠に刻まれる事でしょう。

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