ケレチ・イヘアナチョ

ケレチ・プロミス・イヘアナチョ

ケレチ・プロミス・イヘアナチョ（Kelechi Promise Iheanacho）は、1996年10月3日にナイジェリアのオウェリで生まれたプロサッカー選手です。ナイジェリア代表の一員であり、現在はミドルズブラFCに所属しています。主にフォワードとしてプレーし、その決定力とゴールへの嗅覚で知られています。

初期キャリアとマンチェスター・シティでの台頭

イヘアナチョのサッカーキャリアは、ナイジェリア国内のタイェ・アカデミィーで始まりました。彼の才能が広く知られるきっかけとなったのは、2013年に開催されたFIFA U-17ワールドカップでした。この大会でナイジェリアを優勝に導く原動力となり、個人としてもゴールデンボール（大会最優秀選手）とシルバーブーツ（得点ランキング2位）を同時受賞するという輝かしい成績を残しました。この活躍により、ヨーロッパの主要クラブから熱い視線が注がれることとなります。

多くのクラブが獲得に乗り出す中、彼はマンチェスター・シティFCへの加入を決断します。2014年にシティに加わると、プレシーズンマッチのインターナショナル・チャンピオンズカップで早くも得点を挙げるなど、そのポテンシャルを示しました。しかし、労働許可証の取得手続きや度重なる負傷に悩まされ、トップチームでの公式戦デビューは遅れました。

待望のプレミアリーグデビューは、2015-16シーズンの開幕から数試合を経た第4節ワトフォード戦でした。続く第5節クリスタル・パレス戦では、途中出場からわずか54秒後に公式戦初ゴールを記録。この決勝点により、チームは1-0で勝利を収めました。さらにFAカップでは、アストン・ヴィラ相手にハットトリックを達成するなど、得点能力の高さを証明します。怪我で離脱したサミル・ナスリに代わりチャンピオンズリーグのメンバーにも登録され、決勝トーナメントでデビューを果たしました。このシーズン、イヘアナチョは限られた出場時間の中で8得点を挙げ、93.88分に1得点という圧倒的な得点率を記録。これはチームメイトのセルヒオ・アグエロをも凌ぎ、リーグ全体でトップの数字でした。

2シーズン目となる2016-17シーズン前、リオデジャネイロオリンピックの代表メンバーに選出されますが、クラブの招集拒否により出場は叶いませんでした。シーズン開幕後、クラブとの契約を2021年まで延長。9月にはマンチェスター・ダービーにスタメン出場し、アシストに加え、クラブにとってマンチェスター・ダービーにおける最年少得点記録となるゴールを挙げ、勝利に貢献しました。チャンピオンズリーグでも初得点を記録するなど順調なスタートを切ります。特にAFCボーンマス戦でのゴールは、20歳未満のアフリカ人選手として、またマンチェスター・シティの選手として初のプレミアリーグ通算二桁得点という金字塔を打ち立てました。しかし、冬にブラジル代表FWガブリエウ・ジェズスが加入すると、フォワード陣における序列が低下し、出場機会が激減。怪我でジェズスが不在の期間も、ジョゼップ・グアルディオラ監督からの信頼を得られず、ベンチ外となる日も増えていきました。

レスター・シティでの活躍とFAカップ制覇

出場機会を求め、2017年8月にレスター・シティFCへ完全移籍。5年契約を結びました。加入初年度はなかなかゴールが生まれず、難しい適応期間を過ごしました。転機が訪れたのは2020-21シーズンの後半戦です。レスターは主力選手の負傷に苦しむ中でシステム変更を決断。ジェイミー・ヴァーディとの2トップで起用される機会が増えたイヘアナチョは、このチャンスをものにします。

特に2021年3月以降は驚異的なペースでゴールを量産。シェフィールド・ユナイテッド戦ではプレミアリーグで自身初のハットトリックを達成し、続くFAカップ準々決勝マンチェスター・ユナイテッド戦でも2ゴールを記録し、クラブを29年ぶりの準決勝進出に導きました。この活躍が評価され、クラブと2024年までの新たな契約を締結。FAカップ準決勝サウサンプトン戦では決勝ゴールを決め、チームを1969年以来となる決勝へ導き、見事にFAカップ制覇を果たしました。彼はこの期間、負傷で離脱したエースの穴を埋めるだけでなく、チームを牽引する存在となり、3月にはプレミアリーグ月間最優秀選手賞を受賞しました。

FAカップ優勝後も、2021年夏のコミュニティシールドではマンチェスター・シティ相手に決勝点となるPKを沈め、タイトル獲得に貢献。レスターでは主力の一人として活躍を続け、2023-24シーズンにはEFLチャンピオンシップ優勝にも貢献しました。2024年6月に契約満了に伴い、レスター・シティを退団しました。

セビージャへの移籍と代表活動

2024年7月31日、イヘアナチョはスペインのセビージャFCへ加入。新たな挑戦の場をラ・リーガに移しました。

ナイジェリア代表としては、U-17ワールドカップでの優勝メンバーであり、フル代表にも早くから招集されています。2015年11月にフル代表デビューを果たし、2016年5月には初ゴールを記録。2018 FIFAワールドカップにも出場するなど、ナイジェリア代表の攻撃陣を担う一人として活躍を続けており、2024年8月1日現在で国際Aマッチ55試合に出場し15得点を挙げています。

人物・エピソード

サッカー界の歴史に名を刻むエピソードもいくつか持っています。2017年4月、FAカップ準決勝アーセナル戦の延長戦で途中出場した際、FAカップ史上初めて導入された「4人目の交代選手」としてピッチに立ちました。また、2018年1月には、イングランドにおけるビデオ・アシスタント・レフェリー（VAR）による史上初の公式戦ゴールが、彼の得点により認められました。さらに、2020-21シーズンには、プレミアリーグにおいて、同一シーズンの開催された全ての曜日にゴールを記録した初の選手となる珍しい記録も達成しています。

タイトル

クラブ
フットボールリーグカップ: 2015-16 (マンチェスター・シティ)
FAカップ: 2020-21 (レスター・シティ)
コミュニティシールド: 2021 (レスター・シティ)
EFLチャンピオンシップ: 2023-24 (レスター・シティ)

代表
FIFA U-17ワールドカップ: 2013 (ナイジェリアU-17)

個人
FIFA U-17ワールドカップ ゴールデンボール: 2013
FIFA U-17ワールドカップ シルバーブーツ: 2013
CAF モスト・プロミシング・タレント・オブ・ザ・イアー: 2013, 2016
CAF ベストイレブン（サブメンバー）: 2016
プレミアリーグ月間最優秀選手: 2021年3月
* レスター・シティ年間最優秀選手: 2022-23

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