ケンダー

ケンダーは、ファンタジー小説『ドラゴンランス』シリーズに登場する独特な小人族です。その最大の特徴は、大胆で底知れぬ好奇心と、手にしたものを盗まずにはいられないという習性でしょう。しかし、彼らの盗みは、一般的な盗賊のように金銭や私欲のためではありません。ケンダーにとって物を盗むという行為は、純粋な好奇心を満たすための手段なのです。気がつくと手元に何かあった、というように、無意識的に盗んでしまうことが多いようです。

また、ケンダーは恐怖に対する耐性を持っているという点も特筆されます。魔法によるものを含め、恐怖を感じにくい性質を持つため、危険な状況にも臆することなく飛び込んでいくことができます。ただし、必ずしも幸運に恵まれているわけではないため、不用意な行動が災いし、命を落とすケンダーも少なくありません。

ケンダーは放浪癖があることでも知られています。定住を好まず、常に新しい場所を求めて旅を続けます。旅の過程で地図を作成する者もいますが、正確な地図を作るための忍耐力や技術に欠けるため、実用的な地図は少ないようです。

ケンダーの中には、クローニン・シスルノットのように、その大胆さによって大きな成功を収める者も存在します。彼はドラゴン卿ヒューマスター・トードを倒した英雄として知られています。

ケンダーの文化的な特徴としては、フーパックと呼ばれる杖が挙げられます。フーパックは、単なる杖としてだけでなく、スタッフ・スリングとしても使用できる多機能な道具であり、旅をするケンダーにとっては必需品と言えるでしょう。

ケンダーという種族が生まれた背景には、いくつかの理由があります。まず、『ドラゴンランス』の企画当初、ホビットという種族が商標登録されていたため、同様の種族を登場させることが難しい状況にありました。また、AD&Dのハーフリングに代わる、クリン独自の小人族を登場させる必要がありました。そこで、トレイシー・ヒックマンが「盗賊の種族」という概念に反対したことがきっかけとなり、欲望からではなく好奇心から物を盗むケンダーという種族がデザインされたのです。

その後、『ドラゴンランス戦記』やロジャー・E・ムーアの短編「投げられた石」などを通して、ケンダーの設定はより深く掘り下げられていきました。

ケンダーは、他のファンタジー作品に登場する小人族（ホビットやハーフリングなど）と比較されることもありますが、そのユニークな性格や文化によって、独自の存在感を確立しています。また、グラスランナーも同様の小人族として比較されることがあります。

ケンダーは、ドラゴンランスの世界において、冒険と騒動を巻き起こす、魅力的な存在と言えるでしょう。

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