ケント・チェン

ケント・チェン（鄭 則仕）について

ケント・チェンは1951年5月23日に中国広東省汕頭で生まれた。彼の家族は幼少期に香港に移住し、湾仔の貧しい地区で生活を始めた。この環境の中で、チェンは厳しい現実と向き合うこととなり、家計を支えるために中学校を中退し、皿洗いや宝石店での奉公を経て宝石職人となった。しかし、彼の心の中には俳優になる夢がいつもあり、それに挑戦することを決意する。

1973年、彼は映画会社である「長弓影業公司」の俳優訓練班に加入し、映画界への一歩を踏み出した。彼の体型を活かした端役から始まった俳優業は、1976年に無綫電視のオーディション番組での優勝をきっかけに大きく変化した。この成功を経て、無綫電視と契約を結び、多くのドラマで主演を務めるようになった。

1980年代に入ると、チェンは映画界に進出し始める。1984年には『失婚老豆』で香港電影金像奨の主演男優賞にノミネートされるなど、その才能が認められていく。特に1985年の『何必有我？』では自ら脚本、監督、主演を務め、大ヒットを記録した。この作品では、知的障害を持つ主人公「肥猫」が65歳の老若男女に支持され、以後、チェンの名を象徴するキャラクターとなった。

「肥猫」は彼の代表作として知られ、30年以上にわたって様々な映画やテレビドラマに登場することとなる。80年代後半から90年代前半にかけて、チェンは『大丈夫日記』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』といったヒット作に出演し、1996年には『三個受傷的警察』で再び金像奨主演男優賞を受賞するなど、彼の人気は不動のものとなった。

彼のキャリアにおいて、チェンは他の映画監督との関係も重要だった。特にウィルソン・イップ監督は、チェンを恩人としてあげており、自身の監督作品にも多く出演してもらっている。『導火線　FLASH POINT』や『イップ・マン』シリーズなど、チェンの存在は彼の作品をより印象深いものにしている。チェンが映画界で果たした役割は多岐にわたり、俳優、監督、プロデューサーとして、数え切れないほどの作品に影響を与えてきた。

主な作品

監督作品

• - 『ハートビート100』（心跳一百）1987年
• - 『肥貓流浪記』1988年
• - 『瀟洒先生』1989年
• - 『アンディ・ラウの獄中龍』（獄中龍）1990年
• - 『富貴兵團』（富貴兵團）1990年

出演作品

• - 『霊幻追鬼』（追鬼七雄）1982年
• - 『何必有我？』1985年
• - 『大丈夫日記』1988年
• - 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』1991年
• - 『新ポリス・ストーリー』1993年
• - 『イップ・マン 完結』（葉問4）2019年

ケント・チェンは、香港映画界においてその才能と多彩なキャリアにより重要な存在となっており、彼の作品は今なお多くのファンに愛され続けている。

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