ケンドリック・ジョンソン事件

ケンドリック・ジョンソン事件：高校体育館の謎

2013年1月11日、アメリカ合衆国ジョージア州バルドスタのラウンズ・ハイスクールで、生徒のケンドリック・ラマー・ジョンソンが死亡しているのが発見されました。発見場所は、体育館内の丸めたレスリング用マットの中。仰向けではなく、頭部が下を向いた状態で、マットに挟まれたような状態でした。

初期の捜査と矛盾

最初の捜査と検死では、ジョンソンの死因は事故による体位性窒息と結論づけられました。靴を探している際にマットに転落し、脱出できずに死亡したという仮説が立てられました。しかし、ジョンソンの家族はこの結論に納得せず、独自に病理学者による検死を実施。その結果、鈍的外傷による死亡という異なる結論が示されました。

この食い違う検死結果をきっかけに、事件は新たな局面を迎えます。家族はジョンソンが殺害されたと主張し、弁護士を雇って再調査を要求。ジョージア州中部地方検事も正式に再調査を開始しました。

再調査と民事訴訟

再調査では、監視カメラ映像の分析、関係者への聞き込みなどが行われましたが、決定的な証拠は得られませんでした。一方、ジョンソンの家族は、複数の個人や団体を相手に1億ドル規模の民事訴訟を起こしました。訴状では、ジョンソンの死は他殺であり、関係者が共謀して事件を隠蔽したと主張されました。

この訴訟は、事件の真相究明を目指す家族の強い意志と、関係者側の反論が激しくぶつかり合う、長期に渡る法廷闘争となりました。訴訟の中で、監視カメラ映像の欠損部分や、検死における臓器処理の問題なども取り上げられ、事件の不透明さが浮き彫りになりました。 葬儀業者による遺体処理においても、空洞に新聞紙を詰めていたことが問題視され、追加の捜査が行われました。

連邦捜査と訴訟の終結

連邦捜査局（FBI）も事件に関与し、広範囲にわたる調査が行われました。しかし、2016年、司法省はジョンソンの死に関する犯罪の告発を行わないと発表。十分な証拠が得られなかったと結論づけました。

民事訴訟は後に家族によって撤回され、裁判所は家族側に高額な弁護士費用を支払うよう命じる判決を下しました。裁判官は、家族側の主張を裏付ける証拠が不十分だったと指摘しました。

未解明のまま残された謎

ケンドリック・ジョンソン事件は、様々な憶測や疑惑を残したまま、未解決のまま終結しました。事故死と結論づけられた最初の捜査、家族による再調査と異なる結論、監視カメラ映像の欠損部分、そして民事訴訟など、事件の真相は謎に包まれたままです。この事件は、アメリカ社会における人種問題や、学校における安全対策など、様々な問題を提起するものでもありました。 類似の事例として、1993年に日本で発生した「山形マット死事件」なども挙げられます。 ジョンソン事件は、多くの人々に衝撃と疑問を与え続け、いまだ語り継がれる事件となっています。

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