ケート・ヤングマン

ケート・ヤングマン：ハンセン病救済に尽力したアメリカ人宣教師

ケート・ヤングマン（Kate M. Youngman, 1841年12月17日 - 1910年9月29日）は、アメリカ合衆国出身の宣教師であり、日本のハンセン病患者の救済に生涯を捧げました。彼女は1894年にハンセン病施設「目黒慰廃園」を設立し、患者への医療と生活支援を提供しました。

生い立ちと献身

1841年、ケート・ヤングマンはニューヨーク州キングストンで生まれました。父親は教師であり、彼女は教育熱心な家庭で育ちました。しかし、14歳で母親、17歳で父親を亡くし、学業を中断して家計を支えることになりました。21歳の時には、婚約者を南北戦争で失うという悲劇に見舞われました。失意の中、彼女は再び学校に戻り、師範学校で学びました。卒業後は教員として教鞭を執り、教育者としての道を歩み始めました。

日本への派遣と伝道活動

1873年、日本でキリスト教が公認されると、ヤングマンはアメリカ長老教会外国伝道局から派遣され、日本へとやってきました。当時32歳でした。1874年には、同僚の婦人宣教師メアリー・パークと共に、東京築地にB六番女学校（後の新栄女学校）を設立し、女子教育に尽力しました。女学校で教える傍ら、熱心に伝道活動を行いました。

好善社の設立と社会福祉活動

1877年、ヤングマンは「キリストの精神を社会的に実践する」ことを目指し、10名の女生徒と共に好善社を設立しました。彼女は代表にはならず、見張り役として組織を支えました。1891年には社則が改められ、伝道、教育、慈善の3つを柱とする活動を展開しました。1892年、日本基督芝教会の信者である津島八重がハンセン病を発症し、カトリック系の病院から逃れてきたことを知ったヤングマンは、プロテスタント系のハンセン病施設を作ることを決意しました。アメリカ長老教会からの資金援助が得られなかったため、MTL（ハンセン氏病ミッション）という団体に資金援助を求めました。

目黒慰廃園の設立と運営

1894年、MTLから毎年一定額の資金援助を受けられるようになったヤングマンは、同年5月に1500坪の土地を購入しました。そして10月、東京府荏原郡目黒村に4,950平方メートルの土地を取得し、ハンセン病患者のための施設「目黒慰廃園」を建設しました。津島八重を引き取り、大塚正心、かね夫妻を監督者に任命し、1894年10月13日に正式に慰廃園を発足させました。

慰廃園には、北島剛三、加治木勇吉が嘱託医として就任しました。北里柴三郎は、慰廃園を病院組織にするならば医師を派遣し、医薬を提供すると申し出ました。1899年、慰廃園はこの申し出を受け入れ、北里によって中條資俊、高野六郎らが派遣され嘱託医となりました。しかし、ヤングマンは慰廃園の病院化には賛成しておらず、東京府から病院としての認可が下りると、自ら慰廃園から手を引きました。

晩年と死

慰廃園を離れた後も、ヤングマンは好善社の活動を続けました。1900年には再び好善社の「見張り役」に就任し、組織を支えました。1910年、彼女は好善社からも退き、同年9月29日に60歳で日本で亡くなりました。彼女の墓は、東京都豊島区の染井墓地にあります。

慰廃園のその後

ヤングマンはハンセン病患者との直接的な関わりを避けていたとされています。慰廃園の開所当初の写真にも、彼女の姿はありません。慰廃園には、貧しい人々や、他の施設に収容できなかった政府委託患者（「政患」と呼ばれた）も受け入れられていました。しかし、「政患」と元々の患者との間には待遇の違いなどから軋轢もあったようです。1942年、経営難のため、慰廃園の患者55名は多磨全生園に引き取られました。

ケート・ヤングマンは、日本のハンセン病救済の黎明期に重要な役割を果たした人物として、記憶されるべきでしょう。

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