ケーヴァッタ経

ケーヴァッタ経について

『ケーヴァッタ経』（バーレー語：Kevaṭṭa-sutta）は、パーリ仏典の経蔵長部に含まれる第11の経であり、漢訳では『堅固経』と呼ばれています。この経は、富豪の息子ケーヴァッタを中心に展開し、彼の提案に対する釈迦の教えが描かれています。

経の構成と登場人物

この経は、釈迦やケーヴァッタを主要な登場人物として設定しています。物語の舞台は、ナーランダに位置する豪商パーヴァーリカのマンゴー園で、ここに釈迦が滞在していた際に物語が展開されます。

ケーヴァッタは、釈迦に対して、比丘たちに神通力を見せることで人々の信仰を集めるのではないかと提案しました。この発言は、信者を増やすための新しい方法を模索する、当時の仏教教団における重要なジレンマを示しています。

釈迦の教え

これに対し、釈迦は「魔術的な奇跡で集まった人々は、期待を裏切られるとすぐに去ってしまう」と冷静に応じました。その代わりに、彼は教えを通じて本当の奇跡を示し、十善戒や六根清浄、正念正智など、精神的修養の重要性を説いていきます。

釈迦は、物事の真実を求めるためには、まずは自己の内面を整えることが重要であると教えています。特に、五蓋の除去や四禅、そして六神通についても言及し、内面的な成長を通じてのみ真の理解と解脱が得られることを強調しました。

ある比丘の話も登場します。この比丘は、欲界を構成する四大元素がいつ消滅するのかについて疑問を抱き、さまざまな天界を訪ね歩いたものの明確な答えを得ることができませんでした。最終的に、仏陀のもとに至り、「識が消えれば、色界も欲界も消える」という答えを得たのです。この話は、知識を求める過程での迷いや、最終的には仏陀の智慧に辿り着くことの大切さを教えてくれます。

経典の意義

『ケーヴァッタ経』は、単に神通力の提案や対話だけでなく、道徳的・精神的な教えが豊富に含まれている点で重要です。信者を集めるために奇跡を利用することが必ずしも正しいわけではないという釈迦の教えは、今日においても多くの人々に響く重要なメッセージと言えるでしょう。

この経典は、『南伝大蔵経・経蔵・長部経典1』や『原始仏典 長部経典1』などに収められており、仏教の教えを深く知るための重要な資料として位置づけられています。

関連項目

• - 三学
• - 十善戒
• - 六根清浄
• - 五蓋と五禅支
• - 四禅
• - 六神通
• - 欲界（六欲天）
• - 色界（初禅天など）

この経典を通じて、読者は釈迦の教えの根幹に触れ、自己の精神的な成長を促すための洞察を得ることができるでしょう。

もう一度検索