ケ号爆弾

ケ号爆弾について

ケ号爆弾、正式にはケ号自動吸着弾は、日本が第二次世界大戦の末期に開発した対艦用の赤外線誘導爆弾です。これは、当時の技術をもってしても実戦での使用が難しかったものの、その設計と性能には注目すべき点があります。

性能の特徴

ケ号爆弾は、成形炸薬弾を弾頭に持ち、約600kgの弾頭を装備していました。全長はおおよそ3m、直径は50cm、主翼を含めた全幅は2.5mです。赤外線シーカーを備えており、自由落下をしながら目標を自律的に追尾する能力を持っていました。具体的には、母機から10,000mの高高度で投下されると、尾部にある制動板を開くことで減速し、高度2,000mで目標となる艦艇の熱源を探知するため索敵を開始します。

誘導方法はパッシブホーミングであったため、目標の赤外線放射量を基に動翼を自動で調整し、艦艇へ向かう仕組みでした。ただし、このシステムは技術的な課題があり、特に赤外線放射量が豊富である大型艦艇以外に対しては十分な命中精度を持てませんでした。

実戦での運用

残念ながら、ケ号爆弾は実戦に投入されることはありませんでした。その理由は、開発が進んでいた1945年には戦局が悪化しており、重い弾薬を搭載した母機が敵艦上空に到達することが難しかったからです。さらに、爆弾が一度命中すると、その周辺に火災を引き起こす危険性があったため、同じ戦闘で複数の目標を攻撃することも難しいとされていました。

名称の由来と技術的背景

ケ号という名称は日本陸軍が使っていた表記に由来し、特に「まるケ」という形式（丸の中にカタカナの「ケ」）で知られています。この表記は、赤外線検知装置の研究計画に関連しており、当時の技術者たちの工夫が反映されています。特に、ボロメータ型赤外線センサーを用いたことで、冷却が不要でありながら高精度の赤外線探知を実現する技術が採用されていました。

開発の経緯

1944年から、東芝を中心としたチームが赤外線シーカーの開発に着手しました。爆弾の空力デザインには、中島飛行機の技術者が関与し、母機は海軍の銀河に計画されていました。また、1944年には陸海技術運用委員会が設立され、様々な分野の技術が融合される努力がなされました。

1945年1月には浜名湖で試験投下が行われましたが、誘導装置の動作には成功したものの、操縦装置には不具合があったと報告されています。その後も研究は続きましたが、最終的には量産には至らずに終戦を迎えました。

戦後への影響

開発に関わった技術者たちの中には、後にソニーを創設することになる人物がいたことも特筆すべき点です。特に、海軍の技術中尉であった盛田昭夫と測定器技術者の井深大は、この開発研究会で知り合い、その後の業界に大きな影響を与えました。

このように、ケ号爆弾は当時の日本の技術力を示す一方で、戦局の厳しさを象徴する製品でもありました。

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