ゲイリー・ピーコック

ゲイリー・ピーコック：革新的なジャズ・ベーシスト

ゲイリー・ピーコック（Gary Peacock、1935年5月12日 - 2020年9月4日）は、アメリカ合衆国で主に活躍した、影響力のあるジャズ・ベーシストです。アイダホ州バーリーで生まれ、その音楽性はジャズ界に大きな足跡を残しました。

経歴

ピーコックは13歳でピアノを始め、音楽の道を歩み始めました。1954年からの2年間の兵役中にベースを習得し、その才能を開花させました。除隊後、ロサンゼルスでアート・ペッパー、ハロルド・ランド、バド・シャンクといった著名なミュージシャンと共演し、ジャズ・シーンでのキャリアをスタートさせました。

1962年にニューヨークへ拠点を移すと、フリー・ジャズのムーブメントに身を投じ、ポール・ブレイ、ドン・チェリー、アルバート・アイラー、サニー・マレイなど、前衛的な音楽家たちと共演しました。彼の音楽的な探求心は、ジャンルを超えた新たな表現を追求しました。

私生活では、アネット・ピーコックと結婚しましたが、後に離婚しています。1970年から1972年までの2年間、日本の京都に滞在し、禅や仏教思想に触れ、マクロビオティックの自然食生活を送りました。この経験は、彼の音楽観や人生観に大きな影響を与えたと言われています。

一時活動を休止した後、ポール・ブレイのトリオで復帰し、1970年代後半にはアート・ランディとのトリオでも活躍しました。1977年には、キース・ジャレット、ジャック・ディジョネットとのトリオでアルバム『Tales of another』（ECM）を録音し、国際的な評価を確立しました。

1980年代には、ワシントン州シアトルのコーニッシュ・カレッジで教鞭をとり、後進の育成にも尽力しました。1984年からは、キース・ジャレット、ジャック・ディジョネットとのトリオ（通称：スタンダーズ・トリオ）として活動し、頻繁に日本公演を行い、日本のジャズ・ファンにも親しまれました。

1986年には、富樫雅彦、佐藤允彦と「ウェイヴ」を結成し、新たな音楽性を追求しました。1990年からは、菊地雅章、ポール・モチアンとともに「テザード・ムーン」(Tethered Moon)を結成し、独自の音楽世界を築き上げました。

1993年からはニューヨーク州キャッツキルに在住し、座禅を通して精神的な探求を深めました。2020年9月4日、ニューヨーク州アップステートにて85歳で死去。その生涯を音楽と精神性の探求に捧げました。

同世代のジャズ・ベーシストとして、ポール・チェンバース、スコット・ラファロ、レジー・ワークマン、ロン・カーター、チャーリー・ヘイデンらがいます。

名言

「ベースを初めて手にしたとき、両の腕は正しくベースを弾きはじめ、それ以来わたくしはベースの練習というものをしたことがない」
「アイラーの音楽のエネルギーはどこから来てるんですか」という近藤等則の質問に対し、ピーコックは黙って、股間を指差したという。

ディスコグラフィ

ゲイリー・ピーコックは、数多くのリーダー・アルバムやデュオ・アルバム、トリオ・アルバムを発表しています。また、様々なアーティストのアルバムにも参加しています。

リーダー・アルバム

『イーストワード』 - Eastward (1970年、CBS)
『ヴォイセズ』 - Voices (1971年、CBS)
『テイルズ・オブ・アナザー』 - Tales of another (1977年、ECM)
『12月の詩』 - December Poems (1977年、ECM)
『シフト・イン・ザ・ウィンド』 - Shift in the wind (1980年、ECM)
『一瞬の明日』 - Voice from the Past - Paradigm (1981年、ECM)
Guamba (1987年、ECM)
Now This (2015年、ECM)
Tangents (2017年、ECM)

デュオ・アルバム

ラルフ・タウナー『オラクル』 - Oracle (1994年、ECM)
ラルフ・タウナー『ア・クローサー・ヴュー』 - A Closer View (1998年、ECM)
ビル・フリゼール『峠の我が家』 - Just so happens (1994年、Postcards)
ポール・ブレイ Partners (1991年、Owl)

トリオ・アルバム

キース・ジャレット・トリオ
ウェイヴ (with 富樫雅彦、佐藤允彦)
テザード・ムーン (with 菊地雅章、ポール・モチアン)

外部リンク

* ゲイリー・ピーコック - Discogs（英語）

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