ゲオルク・フリードリヒ (バーデン＝ドゥルラハ辺境伯)

ゲオルク・フリードリヒ：激動の時代を生きたバーデン辺境伯

ゲオルク・フリードリヒ（1573年 - 1638年）は、バーデン＝ドゥルラハ辺境伯として、17世紀のヨーロッパを揺るがした三十年戦争の時代を生きました。領地の統治、宗教改革、そして軍事介入といった、彼の多岐にわたる活動を詳細に見ていきましょう。

生い立ちと領地分割

ゲオルク・フリードリヒは、バーデン＝ドゥルラハ辺境伯カール2世の息子として生まれました。幼くして父を亡くし、母や親族の後見を受けながら成長します。1584年、兄弟と共に領地を分割しますが、これは父の遺言に反するものでした。しかし、遺言の不備を突いて、エルンスト・フリードリヒ、ヤーコプ3世と領土を分割。ゲオルク・フリードリヒはバーデン＝ドゥルラハ南部を獲得しました。1590年にヤーコプが亡くなると、その領地はエルンスト・フリードリヒに戻り、後にゲオルク・フリードリヒが継承しました。

バーデン＝ハッハベルクの統治

成人後、ゲオルク・フリードリヒはバーデン＝ハッハベルク（オーバー・バーデン）の統治を開始します。当初はロッテルン城を拠点としましたが、後にズルツブルクに居城を移しました。宗教的にはルター派を維持し、領内の牧師を育成するため、ズルツブルクにラテン語学校を設立。また、ズルツブルクの都市開発にも力を入れました。彼は聖書を少なくとも58回は通読したとされ、禁欲的な生活を送ったと言われています。

バーデン＝ドゥルラハ辺境伯として

1604年、兄エルンスト・フリードリヒの死後、ゲオルク・フリードリヒはバーデン＝ドゥルラハ辺境伯となり、バーデン＝ハッハベルクと再統合。法律、行政、宗教の分野で幅広い改革に着手し、枢密院の設立や高等裁判所の創設、ルター派の教会法の導入などを行いました。また、国防政策の財源として税金を承認する代わりに、宗教問題について発言権を持つ権利を各等族に与えました。1622年に発布された民法は「ドイツ諸邦で最も徹底したもの」と評されています。

三十年戦争への関与

三十年戦争が勃発すると、ゲオルク・フリードリヒはプロテスタント同盟の主要メンバーとして、積極的に関与します。1608年には同盟に加盟し、同盟軍の将軍に任命されました。1622年、皇帝軍との戦い（ヴィンプフェンの戦い）で敗北し、領地を失うことになります。その後、デンマーク軍に加わりますが、再び敗北を喫し、失意のうちにシュトラスブルクへ隠棲しました。

ヴィンプフェン遠征

1622年春、ゲオルク・フリードリヒは11,000人から12,000人の傭兵を率いて皇帝とカトリック同盟軍に対する遠征を開始しました。しかし、到着が遅すぎてミンゴルスハイムの戦いには参加できず、プファルツの司令官エルンスト・フォン・マンスフェルト伯がカトリック同盟のティリー将軍に惨敗しました。

数日後、ゲオルク・フリードリヒはコルドバ指揮下のスペイン軍の支援を受けたティリーの攻撃を受け、1622年5月6日のヴィンプフェンの戦いで敗北を喫しました。顔に負傷を負い、九死に一生を得てシュトゥットガルトに逃げ、そこで長男に位を譲り退位しました。

引退と晩年

隠棲後は、宗教文学の研究に専念する傍ら、フランスやスウェーデンと連絡を取り合い、ルター派のバーデン統一の夢を追い求めました。1638年、シュトラスブルクで息を引き取り、その遺体はプフォルツハイムの聖ミヒャエル教会に埋葬されました。

結婚と家族

ゲオルク・フリードリヒは生涯に3度の結婚をし、多くの子を儲けました。最初と2番目の結婚では、それぞれ15人と3人の子供が生まれましたが、3度目の結婚では子供は生まれませんでした。

ゲオルク・フリードリヒは、激動の時代に翻弄されながらも、自らの信念を貫き、領地の発展と宗教の維持に尽力した人物として、歴史に名を残しています。

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