プロテスタント同盟

プロテスタント同盟は、1608年に神聖ローマ帝国において、プロテスタントの諸侯たちが結成した同盟です。しばしば「ウニオン」や「ウニオーン」とも呼ばれます。

成立の背景

1607年から1608年にかけて、プロテスタントの帝国自由都市であったドナウヴェルトが、バイエルン公マクシミリアン1世によって強制的に併合され、カトリック化されました。この出来事は、プロテスタント諸侯に大きな衝撃を与えました。直後の帝国議会では、カトリック勢力とプロテスタント勢力の対立が激化し、両者の溝は深まるばかりでした。

こうした状況下で、1608年にプファルツ選帝侯フリードリヒ4世を盟主として、プロテスタント同盟が結成されました。これは、カトリック勢力に対抗するためのプロテスタント側の結束を示すものでした。

カトリック連盟との対立

プロテスタント同盟の結成に対抗し、カトリック勢力は翌1609年にカトリック連盟（リーガ）を組織しました。これにより、神聖ローマ帝国はプロテスタントとカトリックの二つの陣営に分かれ、三十年戦争へと向かう対立構造が明確化されました。

同盟の構成と内紛

プロテスタント同盟の主要メンバーは、アンスバッハ辺境伯ヨアヒム・エルンスト、バイロイト辺境伯クリスティアン、ヴュルテンベルク公ヨハン・フリードリヒ、アンハルト＝ベルンブルク侯クリスティアン1世、プファルツ＝ノイブルク公子ヴォルフガング・ヴィルヘルム、バーデン＝ドゥルラハ辺境伯ゲオルク・フリードリヒの6名でした。

しかし、同盟内にも問題がありました。1609年に発生したユーリヒ＝クレーフェ＝ベルク連合公国を巡る継承戦争において、ヴォルフガング・ヴィルヘルムとその父フィリップ・ルートヴィヒがカトリックに改宗し、カトリック連盟へと寝返ったのです。一方、ブランデンブルク選帝侯ヨーハン・ジギスムントは、プロテスタント同盟に接近しました。また、プロテスタント internal でも、同盟の主要な君主が信仰していたカルヴァン派とルター派の諸侯は互いに反目し合い、一枚岩ではありませんでした。

解散とその後

1619年、フリードリヒ4世の息子であるフリードリヒ5世が、ボヘミア貴族の要請を受けてボヘミア王に即位しました。しかし、プロテスタント同盟は報復を恐れ、翌1620年にカトリック連盟とウルムの条約を締結し、中立の立場を取りました。プロテスタント同盟からの支援を得られなくなったフリードリヒ5世は、神聖ローマ皇帝フェルディナント2世に反撃され、白山の戦いで敗北し、王位を失いました。

1621年、フェルディナント2世の命令により、プロテスタント同盟は5月24日に解散しました。

解散後も、バーデン＝ドゥルラハ辺境伯ゲオルク・フリードリヒは抵抗を続けましたが、ヴィンプフェンの戦いで大敗を喫し、辺境伯を退位しました。フリードリヒ5世はネーデルラントへ亡命しました。その後、ハプスブルク家の勢力拡大に危機感を抱いたフランスが、デンマークやスウェーデンと対ハプスブルク同盟を結成し、諸外国が神聖ローマ帝国に介入したことで、三十年戦争は激化の一途をたどることになりました。

プロテスタント同盟の解散は、三十年戦争の転換点となり、ヨーロッパ全体の勢力図を大きく変えることになったのです。

参考文献

木村靖二ら編『世界歴史大系　ドイツ史1』山川出版社、1997年
シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『ドイツ三十年戦争』刀水書房、2003年

もう一度検索