ゲオルゲ・ディマ音楽アカデミー

ゲオルゲ・ディマ音楽アカデミー（ルーマニア語: Academia de Muzică "Gheorghe Dima"）は、ルーマニア北西部の都市クルージュ＝ナポカに所在する国立の音楽大学です。この教育機関の起源は、トランシルヴァニア地方がハンガリー王国の一部であった時代に遡ります。具体的には、1819年にルジチカ・ジェルジュ氏の主導によって設立された「音楽協会」がその始まりとされています。

沿革

設立当初の音楽協会は、1837年に「音楽院」へと組織改編されました。教育活動は着実に広がり、翌1838年にはオラトリオ公演も行うなど、地域の音楽活動に貢献しました。校舎については、1902年秋にトルダラギ・コルダ館の2階へ移転が行われました。

1919年、第一次世界大戦後の政治的な変化によりトランシルヴァニアがルーマニア王国に編入されると、新たな高等音楽教育の必要性が生まれました。これにより、ルーマニア語で教育を行う「クルージュ音楽院」が新設され、ルーマニアの著名な作曲家ゲオルゲ・ディマ氏が初代学長に就任しました。その後、1931年には音楽分野に加え演劇分野も包含する教育機関として、「音楽演劇アカデミー」へと名称が変更されました。

第二次世界大戦を経てルーマニアに共産党政権が樹立されると、アカデミーは再び大きな変革に直面します。1949年には、ルーマニア・ギリシア・カトリック教会への弾圧と教会財産の接収が進む中で、アカデミーの本部もレジェルイ通り（現在のI.C.ブラティアヌ通り）にあったクルージュ統一神学アカデミーの建物へと移転を余儀なくされました。続く1950年には、体制の指導の下、既存のハンガリー系の音楽院とルーマニア系の音楽院が統合されることとなり、名称も再び「音楽院」に戻されました。校舎もこの時期に複数回移転を経験し、トランシルヴァニア公ボチカイ・イシュトヴァーンの生家を経て、現在はかつてギリシア・カトリック教会の神父養成学校として利用されていた建物に落ち着いています。

1989年のルーマニア革命による共産党体制崩壊を経て、1990年には高等教育機関の名称として「アカデミー」が復活しました。同時に、クルージュ音楽院の初代学長としてルーマニア音楽界に貢献したゲオルゲ・ディマ氏の功績を記念し、その名を冠した現在の正式名称「ゲオルゲ・ディマ音楽アカデミー」となりました。

組織と教育

現在のゲオルゲ・ディマ音楽アカデミーは、主に3つの学部で構成されています。提供される教育プログラムは非常に多岐にわたり、音楽学、音楽教育学、指揮、様々な楽器の演奏、声楽、さらにはダンスの演出および教育学、オペラ演出といった専門分野が含まれます。理論と実践を組み合わせた高度なカリキュラムを通じて、国内外で活躍できる専門家を育成しています。

著名な関係者

本アカデミーは、長年にわたりルーマニア国内外の音楽界、学術界に貢献する多くの人材を輩出してきました。以下に、著名な教師および出身者の一部を挙げます。

- ディエター・アッカー（作曲家）
- アーゴシュトン・アンドラーシュ（ヴァイオリニスト）
- アルマーシ・イシュトヴァーン（民俗音楽学者）
- エーリッヒ・ベルゲル（指揮者）
- ビルタラン・ヨージェフ（作曲家）
- アントニン・チョラン（指揮者）
- エミル・シモン（指揮者）
- デッリ＝サボー・ゲーザ（作曲家）
- デメーニュ・アティッラ（作曲家）
- エイシコヴィチ・ミハーイ（作曲家）
- ファルカシュ・フェレンツ（作曲家）
- ファーチョル・ルドルフ（ヴァイオリニスト）
- ヘルツ・ペーテル（オペラ歌手）
- ヤガマシュ・ヤーノシュ（民俗音楽学者）
- トゥドル・ジャルダ（作曲家）
- ハリ・ベーラ（作曲家）
- カッローシュ・ゾルターン（民俗学者）
- キルコーシャ・ユーリア（オペラ歌手）
- クリザ・アーグネシュ（オペラ歌手）
- ラカトシュ・イシュトヴァーン（音楽史学者）
- ラースロー・フェレンツ（音楽史学者）
- リゲティ・ジェルジュ（作曲家）
- マールコシュ・アルベルト（作曲家）
- オルバーン・ジェルジュ（作曲家）
- パロチャイ・ジグモンド（詩人）
- ヨネル・パンテァ（オペラ歌手）
- ルハ・イシュトヴァーン（ヴァイオリニスト）
- セニク・イロナ（民俗音楽学者）
- シギスムンド・トドゥツァ（作曲家）
- テレーニ・エデ（作曲家）
- コルネル・ツァラヌ（作曲家）
- ヴィーグ・イボヤ（オペラ歌手）

ゲオルゲ・ディマ音楽アカデミーは、その長い歴史の中で様々な政治的・社会的な変遷を経験しながらも、ルーマニアにおける高等音楽教育の中心的な役割を果たし続けています。現在も国内外で活躍する多くの音楽家や研究者を育てており、その伝統は引き継がれています。

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