ゲルハルト・オピッツ

ゲルハルト・オピッツ

1953年2月5日、西ドイツ（当時）のバイエルン州フラウエナウに生まれたゲルハルト・オピッツは、ドイツを代表する傑出したピアニストの一人です。幼少期から音楽の才能を示し、5歳でピアノの手ほどきを受け始めました。彼の公の舞台への最初の登場は、11歳の時、バーデン・ヴュルテンベルク州ハイルブロンにおいて、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調 KV.466を演奏した際のことでした。

教育と師事

ハイルブロンのユリウス・ロベルト・フォン・マイヤー・ギムナジウムで学び、大学入学資格（Abitur）を取得して卒業した後、本格的に音楽の道を歩み始めます。シュトゥットガルト音楽芸術大学ではパウル・ブックに師事し、その後ミュンヘン音楽大学でフーゴー・シュトイラーの指導を受けました。さらに、1973年には伝説的なピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプと巡り合う機会を得たことは、彼の音楽家としての形成において重要な意味を持っています。

国際的な評価と教育者として

オピッツのキャリアにおける大きな転機となったのは、1977年に開催された第2回ルービンシュタイン国際ピアノコンクールでの優勝です。これは旧西ドイツ出身のピアニストとして初の快挙であり、彼を一躍国際的な注目を浴びる存在としました。この成功を受けて、彼は演奏活動の幅を広げると同時に、後進の指導にも情熱を注ぎます。1981年にはミュンヘン音楽大学のピアノ科教授に史上最年少で就任し、2012年まで実に30年以上にわたり、教育者として多くの才能を育てました。

演奏活動と録音

オピッツの演奏活動はドイツ国内に留まらず、世界各地に及んでいます。その膨大なレパートリーと深い音楽性に基づいた演奏は、多くの聴衆を魅了してきました。また、彼は非常に多作なレコーディングアーティストとしても知られています。現在はドイツのヘンスラー社と専属契約を結んでおり、精力的に録音を進めています。

特に注目されるのは、ベートーヴェンのピアノソナタ全集録音です。ドイツのノイマルクトにあるライトシュターデルで録音されたこの全集は既に収録を終え、ヘンスラー社から順次リリースされています。ベートーヴェン作品への深い洞察に基づいたこれらの録音は、彼の芸術性の真骨頂を示すものです。ベートーヴェンの次に彼が探求の対象としたのはシューベルトであり、今後はシューベルトのピアノ作品集がヘンスラー社よりリリースされる予定です。

これまでにオピッツは、数々の重要な全集録音を残しています。例えば、

1989年のブラームス：ピアノ・ソロ作品全集
1990年代前半のマレク・ヤノフスキ指揮ゲヴァントハウス管弦楽団とのベートーヴェン：ピアノ協奏曲全集
1990年代前半のグリーグ全集

などがあり、いずれも高く評価されています。

世界的な指揮者との共演

オーケストラとの共演も数多く、世界の第一線で活躍する著名な指揮者たちと演奏を重ねてきました。その顔ぶれは、

カルロ・マリア・ジュリーニ
サー・コリン・デイヴィス
ヴォルフガング・サヴァリッシュ
ロリン・マゼール
リッカルド・ムーティ
ズビン・メータ
サー・ネヴィル・マリナー
* ケント・ナガノ

など、錚々たる音楽家たちです。近年は特にリッカルド・ムーティからの信頼が篤く、ニューヨーク・フィルハーモニックやバイエルン放送交響楽団といった世界的な名門オーケストラとの共演が頻繁に行われています。

日本での活動

日本においても、1994年にはNHK教育テレビの番組『趣味百科 ベートーベンを弾く』に出演するなど、その存在は広く知られています。演奏、教育、録音の三方面にわたり、ドイツ音楽の伝統を受け継ぎながらも自身の音楽性を追求し続けるゲルハルト・オピッツは、現代の音楽シーンにおいて重要な位置を占めるピアニストと言えるでしょう。

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