コイル切手

コイル切手とは

コイル切手とは、ロール状に巻いて販売されている切手のことで、自動販売機や自動貼付機へのセットを想定して作られました。日本では切手収集家の間で「コイル切手」と呼ばれていますが、郵政省（当時）では「ロール切手」と呼んでいました。

コイル切手の歴史

コイル切手は、20世紀初頭にアメリカで誕生しました。ダイレクトメールの発送業務を行う業者が、書状の封入から糊付け、切手の貼付までを自動化できる機械を要望したことがきっかけです。1906年に最初のコイル切手が製造され、当初は民間業者が自社製品に利用していました。その後、1908年に郵政が正式にコイル切手を発行し、500枚または1000枚を一巻にして販売しました。

1923年頃までは民間業者によるコイル切手の製造が続きましたが、輪転印刷機が実用化される以前は、平面版印刷機で印刷されたシートを手作業で加工して製造していました。そのため、切手の繋ぎ目が生じることがあり、収集家の間ではこの繋ぎ目を挟んだペアを「ペーストアップ・ペア」と呼んでいます。輪転印刷機で製造されたコイル切手には原則として用紙の継ぎ目は出ませんが、実用版の継ぎ目に相当する場所に特徴が現れる場合があり、そのような部分を挟むペアやストリップも収集の対象となっています。

コイル切手の特徴

コイル切手の特徴は、左右または上下のいずれかに目打ちがなく、ストレートエッジになっていることです。ただし、イギリスやドイツなど一部の国では四辺に目打ちがあるコイル切手も存在します。スウェーデンでは1920年以降、郵便局で販売される切手の多くがコイル切手です。

日本のコイル切手

日本で最初にコイル切手が発行されたのは1933年11月1日で、東京中央郵便局に切手の自動販売機が設置されたのが最初です。一般発売は11月3日からでした。その後、集配を行う郵便局など一部の局で販売されましたが、全国的には普及しませんでした。当初はがきや封書用の額面が中心でしたが、1960年代以降は高額料金や細かな料金に対応するため、それ以外の額面のコイル切手も自動販売機で扱われるようになりました。

1980年代に入ると、切手の自動販売機の設置台数が増加しました。これらの自動販売機では、コイル切手の他に、はがきや切手帳も販売されていました。1989年から1994年にかけて消費税が導入され、封書やはがきの基本料金に1円の端数が生じた際には、1円のつり銭が出せない構造であったため、41円切手は10枚、62円切手は5枚の単位で販売されていました。

1997年4月10日からは、一部の郵便局で額面を自動販売機で印字する新方式のコイル切手が登場しました。図案は50円、80円、90円、130円用としてスズメと稲と椿を描いたものと、速達料金270円用としてスズメとモミジと椿を描いたものの2種類がありました。しかし、130円切手は同年12月1日に定形外50グラムまでの料金が120円に引き下げられたため、販売が中止されました。販売期間が短く、販売打ち切りが事前に周知されていなかったため、切手収集家の間で十分にストックを確保できず、希少価値が高まっています。また、職員のセットミスによる額面10円のエラー切手や、プログラムの誤りから低額面用の台紙に額面270円が印字されたエラー切手も存在します。印字機能自体のトラブルも多発していました。

日本の郵政省における呼称は「ロール切手」でしたが、収集家の間では英語の "coil stamps" に倣った「コイル切手」が一般的に用いられました。郵政省が「ロール切手」という表現を使用した理由は、日本で最初のコイル切手の製造に使用されたのがドイツのゲーベル社の凸版輪転機だったため、ドイツ語由来の呼称を採用したと考えられています。

近年ではコンビニエンスストアで24時間切手を購入できるようになったことや、切手自動販売機が設置されている郵便局の多くに時間外窓口（ゆうゆう窓口）があったことから、合理化の一環として2007年7月をもって切手自動販売機が全面廃止されました。それ以降、日本ではコイル切手の新規発行は行われていません。

日本郵政公社（当時）からコイル切手の販売中止に関する公式発表がなかったため、販売終了に気づかなかった切手収集家も少なくありませんでした。

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