コウホネ

コウホネ (河骨)

コウホネ（Nuphar japonica）は、スイレン科コウホネ属に分類される多年生の抽水性水草です。日本各地の浅い池や沼に自生し、その独特な生態と美しい花姿から、古くから人々に親しまれてきました。

特徴

コウホネは、水底の泥の中を這うように伸びる太い地下茎を持つことが特徴です。この地下茎は白く、骨のように見えることから「河骨」という名前の由来になったとされています。地下茎からは葉柄が伸び、水面に浮かぶ浮水葉と水面から立ち上がる抽水葉の2種類の葉をつけます。また、水中には細長い沈水葉も存在します。水上葉は卵形で光沢のある緑色をしており、抽水葉は水面から鋭角に立ち上がりますが、水深が深い場所では水面に浮かびます。流水域では沈水葉のみをつけることもあります。

夏になると、長い花柄の先に直径3～5cmほどの黄色いカップ状の花を咲かせます。花は数日間開花し、雌しべが先に成熟してから雄しべが成熟する雌性先熟という特徴を持ちます。萼片は5枚で花弁のように見え、花弁は多数で萼片よりも短いです。雄しべも多数あり、雌しべは星形に切れ込んだ柱頭盤を持ちます。花が終わると、萼片は緑色になり、果実期も残ります。果実は緑色のつぼ形で、水中で崩れて種子を放出します。種子は倒卵形で褐色をしています。

分布・生態

コウホネは、北海道から九州にかけての日本各地に分布しています。かつては韓国、沿海州、サハリンにも分布するとされていましたが、現在では日本固有種であると考えられています。水深が浅く、泥が堆積した湖沼や河川、水路などに生育します。

保全状況

コウホネは、日本全体としては絶滅危惧種に指定されていませんが、河川改修や圃場整備などの影響により生息数が減少しており、多くの地域で絶滅危惧種に指定されています。特に、千[[葉県]]、神奈川県、愛知県などでは絶滅危惧I類に指定されており、その保全が急務となっています。また、コウホネの変種であるナガバコウホネも千[[葉県]]で絶滅危惧I類に指定されています。さらに、コウホネが関わる雑種であるナガレコウホネやサイジョウコウホネも、それぞれ絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されており、これらの種を含めた総合的な保全対策が求められています。

人間との関わり

コウホネは、古くから人々の生活に関わってきました。地下茎は乾燥させたものが川骨（せんこつ）という生薬として利用され、鎮咳、去痰、利尿、消炎、浄血などの効果があるとされています。アイヌ民族は、コウホネを「カパト」と呼び、地下茎を食用として利用していました。また、コウホネは観賞用としても栽培され、庭園の池などで美しい花を咲かせています。アクアリウムでは沈水葉が鑑賞の対象となり、生け花にも利用されることがあります。家紋としてもコウホネの葉を模したものが使われており、文化的な側面も持ち合わせています。

名称

コウホネの名称は、地下茎が骨のように見えることに由来するという説が有力です。別名としてカワホネ、ヤマバス、タイコノブチなどがあります。花言葉は「崇高」「秘められた愛情」「その恋は危険」です。俳句にも詠まれるなど、古くから日本人に親しまれてきた植物です。

分類

コウホネにはいくつかの種内分類群が存在しますが、分類学的に分けられないこともあります。また、園芸用として「variegata」と呼ばれる品種も流通しています。コウホネは、他のコウホネ属の植物と雑種を形成することがあり、その複雑な交雑関係が研究されています。

コウホネは、その美しい姿と様々な利用価値から、人々に愛されてきた植物です。しかし、近年は生息環境の悪化により数を減らしており、その保全が重要な課題となっています。

もう一度検索