コガタノゲンゴロウ

コガタノゲンゴロウ (Cybister tripunctatus lateralis)

コガタノゲンゴロウは、コウチュウ目のゲンゴロウ科に属する水生昆虫で、主に日本及びアジアの一部で見られます。その名の通り、ゲンゴロウ科に位置しながらも大きさはより小型です。特に、この昆虫は体長が24-29ミリメートルで、平たい長卵型の体形を持ち、背面は鮮やかな光沢のある緑色または黒褐色です。習慣としては水生植物が豊富な浅い水域を好むため、池や水田などに生息しています。

特徴

コガタノゲンゴロウは、同じゲンゴロウ属のCybister chinensisと非常に似ていますが、名前の通り、体は小型です。 腹面は黒褐色をしており、これはゲンゴロウの黄褐色に対する明確な識別点です。頭部はたくさんの点刻が施されており、前胸や上翅には点刻列が見られます。また、オスの交尾器は独特の形状をしており、先端部が二又になっています。触角と口枝は黄褐色で、後脚は暗赤褐色という美しい色合いが特徴的です。

分布

この種は日本の関東地方以西、本州、四国、九州、対馬、南西諸島、小笠原諸島に広がっており、国外では台湾、中国大陸、朝鮮半島でも見られます。特に日本では、生息地が著しく減少してきています。

生態

コガタノゲンゴロウは特に水生植物が豊富な朝浅い止水域を好みます。成虫の寿命は2-3年で、主に4月から7月にかけて水草の茎に産卵します。幼虫はしばしば初夏に見られる一方で、条件次第では秋まで産卵が続くことがあります。孵化から成虫になるまでには約2か月かかります。成虫と幼虫はどちらも肉食性ですが、成虫は時に水草も摂取します。

保全状況

かつてこの種は日本中で普通に見かけましたが、農薬の使い過ぎによって急速に数を減らしました。2018年の時点で、コガタノゲンゴロウは日本のレッドリストにて絶滅危惧II類に指定され、一部の地域では絶滅が確認されています。東京都、神奈川県など多くの都道府県では絶滅種として扱われ、特に鳥取県や愛媛県では採集が禁止されています。

近年では、京都や三重県での再発見も報告されており、個体数が少しずつ増加している兆候も見られます。特に南西諸島では比較的多く観察されています。

人間との関係

コガタノゲンゴロウは飼育が容易である一方、適切な環境が要求されます。窮屈な空間での飼育は避けるべきで、冬季には10℃から15℃の温度を保つことが望ましいです。中国では、この昆虫は食用としても知られており、調理方法によっては旨味を感じられることもあります。

江崎悌三はその風味を干しエビに例え、「異様な臭気があるが、慣れると病みつきになる」と述べています。また、コガタノゲンゴロウは過去には民間療法においてさまざまな病気の治療に用いられることもありました。日本や中国、朝鮮半島では、伝統的な医学としての利用がなされてきた歴史があります。これらの要因から、コガタノゲンゴロウはただの昆虫にとどまらず、文化的かつ自然環境の保全にも大きな影響を与える存在です。

もう一度検索