コケシノブ科

コケシノブ科 (Hymenophyllaceae)

コケシノブ科は、シダ植物の一群であり、主に小型で薄い葉を持つことが特徴です。英語では「フィルム状のシダ」とも称され、その独特な外見から多くの観察者を魅了しています。これらの植物は、湿った岩や樹皮に生息しており、特に日本の本土に多く分布しています。長い匍匐茎を持ち、木陰でコケと共に岩面を覆っている様子は、自然の中で見られる美しい光景の一つです。

特徴

コケシノブ科の葉は、非常に薄く、ほとんどが半透明であり、乾燥すると丸まる特性を持っています。葉がこのように薄いのは、葉身の細胞層が単一層で構成されているからです。この造りのおかげで、一般的な葉に見られる気孔や細胞間隙が存在しません。これは、光合成に必要な二酸化炭素の拡散が効率的に行えなくなったためで、コケシノブ科植物にとって役立たないからです。また、コケシノブ科の胞子のうは葉の裏ではなく、葉脈の先端や縁に出現し、その形は種によって異なります。

茎は、日本に見られるものが多く匍匐しますが、短くて這うものや直立するものもあり、それぞれに異なる特徴を持っています。茎には毛が生えていることが一般的で、葉は小さいものから大きく分かれたものまで多様性があります。特に大きな葉は、五回羽状複葉にまで分かれることがあります。葉柄は一般的に細くて木質化しており、茎との間にジョイントがないのも特徴です。コケシノブ科の前葉体は、ハート形ではなく、糸状やリボン状に成長し、成長速度は非常に遅いことが知られています。

分布と系統

この科は、世界中に分布しているたくさんの種を含んでおり、多くは熱帯地域に集中しています。現時点で約600種が確認されており、日本国内でも約30種が知られています。この群の特殊性から、他のシダ類との関係に関しては定説が存在しないものの、胞子のう群が葉の縁に現れることから、タカワラビ科に近いとの見解もあります。しかし、コケシノブ科は各地域の熱帯雨林を中心に進化し、多様な着生植物として分化を遂げてきたと考えられています。

分類

コケシノブ科には、約600種が知られており、これを分類する方法は意見が分かれます。2科に分ける説や、8属から30属以上に分類する説もありますが、ここでは主要な観点に従ったまとめを行います。日本においては4属30種が記録されていますが、そのうちの2属は南西諸島にのみ分布している種となっています。

代表的な属と種

• - コケシノブ属 (Hymenophyllum)

- コケシノブ (H. wrightii van den Bosch)
- ホソバコケシノブ (H. polyanthos)
- オオコケシノブ (H. badium Hook. et Grev.)
- キヨスミコケシノブ (H. oligosorum Makino)
- コウヤコケシノブ (H. barbatum (v. d. B.) Barker)

• - アオホラゴケ属 (Crepidomanes)

- ウチワゴケ (C. minutum (Bl.) K. Iwats.)
- ツルホラゴケ (C. auriculatum (Bl.) K. Iwats.)
- ハイホラゴケ (C. birmanicum (Bedd.) K. Iwats.)
- リュウキュウホラゴケ (C. liukiuense (Yabe) K. Iwats.)
- アオホラゴケ (C. latealatum (v. d. B.) Copel)

• - マメゴケシダ属 (Trichomanes)

- ゼニゴケシダ (T. tahitense Nadeaud)

• - ソテツホラゴケ属 (Cephalomanes)

- キクモバホラゴケ (C. apiifolium (Pr.) K. Iwats.)
- カンシノブホラゴケ (C. thysanostomum (Makino) K. Iwats.)
- オニホラゴケ (C. obscurum (Bl.) K.Iwats.)
- ソテツホラゴケ (C. javanicum (Bl.) van den Bosch)

このように、コケシノブ科は多様な特性を持つ独特のシダ植物として知られ、特に湿潤な環境に適応した形で進化してきた興味深い群です。

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