着生植物

着生植物とは

着生植物とは、土壌に根を張らず、他の植物や岩などに付着して生活する植物の総称です。樹木に着生するものが代表的ですが、岩盤や人工物に着生するものも存在します。寄生[[植物]]と混同されることがありますが、着生植物は付着している植物から栄養を奪うことはありません。自ら光合成を行い、雨水や空気中の水分、養分を吸収して生きています。

一般的な特徴

着生植物の多くは、樹皮に張り付くための特殊な根を持っています。しかし、コケが厚く堆積した場所に根を下ろすものや、パイナップルの仲間のように、葉の付け根に水を溜めて利用する種もいます。チランジア属のように、根が退化し、葉で水分を吸収するユニークな種も存在します。樹上で生活するため、体を支える力が弱く、高く伸びるものは少ないです。多くはつる[[植物]]のように他のものに寄りかかったり、垂れ下がるように成長します。

コケ[[植物]]や地衣類には着生生活を送るものが多く、シダ[[植物]]や種子植物では特定の科に集中する傾向があります。着生植物は、独特な姿や美しい花を持つものが多く、観賞用に栽培されることも多いです。

偽着生

樹上には、土壌のような環境が存在するため、普通の植物が発芽することがあります。これを偽着生と呼びます。また、絞め殺し植物のように、最初は樹上に着生しますが、後に根を地面に伸ばして自立する植物もいます。

範囲と境界

着生植物は、主に樹木に着生するものを指しますが、岩に着生するものを着生植物に含めるかどうかについては、見解が分かれる場合があります。岩の上は土壌が堆積すれば通常の地面と変わらないため、着生植物とそうでない植物の生活が入り混じることがあります。着生植物には、樹木にしか出現しないものもあれば、岩の上にも出現するものもあり、同じ種でも環境によって生息場所を変えることがあります。また、つる[[植物]]は樹木に絡み付いて成長しますが、地上との繋がりを持ち続けるため、着生植物とは区別されます。

着生生活への適応

水分

着生植物にとって、水分は重要な問題です。通常の植物のように地中から水を吸い上げることができないため、雨水や霧に頼って水分を補給します。そのため、降雨量が多く、霧が発生しやすい場所に多く見られます。コケ類は乾燥時に休眠しますが、種子植物は葉や茎を厚くしたり、貯水器官を発達させたりすることで乾燥に耐えます。パイナップルの仲間は、葉の付け根に水を溜める仕組みを持ち、チランジア属は特殊な毛で水分を吸収します。

肥料

着生植物は、無機窒素化合物や燐酸塩などの肥料分を、雨水に溶け出したものを吸収したり、葉に落ちてきた有機物を分解することで得ています。パイナップルの仲間の貯水槽には、カエルや昆虫が住み着き、その排泄物が肥料となることもあります。また、オオタニワタリやビカクシダのように、落ち葉を溜めて肥料分を得るための特殊な葉を持つものもあります。

着生植物は、土壌に根を下ろす植物に比べて肥料分の獲得に苦労しているように見えますが、熱帯雨林のような場所では、土壌の養分が乏しいため、着生植物はむしろ有利な立場にあります。樹木から溶け出す養分をいち早く吸収し、落葉を溜めて腐植質を生成することで、効率的に肥料分を獲得しています。

利用

着生植物は、その独特な姿や美しい花から、観賞用として広く栽培されています。特にラン科の植物は、洋ランとして人気があります。栽培には、ミズゴケやヘゴ板などが用いられます。アクアリウムでは、シダ類やサトイモ類、水生のコケ[[植物]]などが利用され、岩や流木に活着させて栽培します。しかし、その一方で、乱獲や生息地の破壊により、絶滅の危機に瀕している種も少なくありません。

分類

着生植物は非常に広範囲の植物群に存在します。以下に代表的な例を挙げます。

地衣類：ウメノキゴケ、サルオガセなど
コケ[[植物]]：多くのセン類、苔類
シダ[[植物]]：マツバラン科、ヒカゲノカズラ科、イワヒバ科、ハナヤスリ科、コケシノブ科、シノブ科、ツルシダ科、ホウライシダ科、シシラン科、チャセンシダ科、ツルキジノオ科、ウラボシ科など
双子葉[[植物]]：ベンケイソウ科、ユキノシタ科、スグリ科、タヌキモ科、イワタバコ科、サボテン科など
単子葉[[植物]]：ラン科、パイナップル科、ユリ科、サトイモ科など

参考文献

沼田真(1972)「植物たちの生」：岩波新書

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