コジ・ファン・トゥッテ

コジ・ファン・トゥッテ (Così fan tutte) K.588

モーツァルトが1790年に作曲したオペラ・ブッファ『コジ・ファン・トゥッテ』は、男女の愛と心変わりをテーマにした作品です。このオペラの正式なタイトルは、『コジ・ファン・トゥッテ, ossia La scuola degli amanti（女はみなこうしたもの、または恋人たちの学校）』と呼ばれています。全2幕で構成されており、特にアンサンブルが多い点が特徴です。近年、多くは『コシ・ファン・トゥッテ』と表記されることが一般的ですが、イタリア語の発音に基づく正確な表記は「コジ」であるとされています。

概要

モーツァルトは、オペラ『フィガロの結婚』や『ドン・ジョヴァンニ』に続き、ロレンツォ・ダ・ポンテと共にこの作品を作り上げました。初演は1790年1月26日、ウィーンのブルク劇場で行われましたが、その後すぐに皇帝ヨーゼフ2世が逝去したため、上演は10回程度にとどまりました。物語は、姉妹の恋人である二人の男性が、互いに相手の貞節を試すために口説くというものです。結果的に、二人とも心変わりし、その過程で生じる人間関係の複雑さが描かれています。作品の原語のタイトルが示す通り、「すべての女性はこうする」というテーマが曲の底流に流れています。

当初、19世紀においてこの作品は不道徳であるとして評価が低く、特に作曲家ワーグナーからも厳しい批評がありました。しかし、20世紀以降、このオペラは再評価され、モーツァルトの代表作の一つとして広く認識されています。商業的には『フィガロの結婚』や『ドン・ジョヴァンニ』、さらには『魔笛』とともに「四大オペラ」と呼ばれたり、他の作品を加えて「五大オペラ」と称されたりすることもあります。

特徴

この作品の独特な構成の一つは、アンサンブルの比率が特に高いことです。全30曲の中で16曲が重唱形式であり、登場人物の男女の人数も対称的に配列されています。また、フィオルディリージの各幕におけるアリアには美しい技巧が必要で、当時の歌手の能力を反映しています。このオペラは、18世紀のステレオタイプな登場人物描写に留まらず、それぞれのキャラクターの心理を豊かに音楽で表現することで、作品全体の質を高めています。

登場人物と楽器編成

• - フィオルディリージ（ソプラノ） - 姉であり、恋人はフェルランド。
• - ドラベッラ（メゾソプラノまたはソプラノ） - 妹で、恋人はグリエルモ。
• - フェルランド（テノール） - 士官で、フィオルディリージの恋人。
• - グリエルモ（バリトン） - 士官で、ドラベッラの恋人。
• - ドン・アルフォンソ（バス） - 老哲学者で、この2人の友人。
• - デスピーナ（ソプラノ） - 姉妹の女中。

楽器編成は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ティンパニ、弦楽器など、多彩な楽器によって支えられています。演奏時間は各幕で約90分、全体では約3時間の大作です。

あらすじ

第1幕

物語は18世紀末のナポリから始まります。青年士官のフェルランドとグリエルモは、老哲学者ドン・アルフォンソの「女は必ず心変わりする」という主張に対抗し、自分たちの恋人たちにはそれが当てはまらないと反論します。そこでドン・アルフォンソは、彼らの貞節を証明するために賭けを提案します。フィオルディリージとドラベッラは自分たちの愛を歌い上げ、物語が進行しますが、後に二人の青年は劇中で様々な策略を用いて姉妹の心を試みることとなります。幕はドン・アルフォンソの計画によって混乱しつつ閉じられます。

第2幕

姉妹の間で恋の手法が語られ、互いの恋人に対する思いが揺れ動く中、ドン・アルフォンソの策略が進みます。姉妹と変装した二人の青年のやり取りが進むにつれ、恋人たちは混乱し、最終的に心が交わることが描かれます。結婚式の準備が進むなか、変装が解かれ、すべての事実が明らかになります。それにより、登場人物たちは和解し、物語は終息を迎えます。

このオペラは、愛情と裏切りの複雑な人間模様を描き出し、当時の人々に新しい視点を提示した名作となっています。

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