コスミド

コスミド (Cosmid)

概要

コスミドは、分子生物学研究で使用されるベクター（遺伝子運搬体）の一種です。バクテリオファージとプラスミドの特性を併せ持ち、特に約30kbpから45kbpという比較的大きなDNA断片をクローニングするために開発されました。

特徴

コスミドベクターは、バクテリオファージのDNAパッケージングシステムによって認識されるCos領域（cohesive end site）と呼ばれる特殊配列を有しています。このCos領域により、コスミドDNAは効率的にファージ粒子内に詰め込まれます。

また、コスミドはプラスミドとしての骨格を持ち、宿主細胞内での複製起点や選抜マーカーを備えています。一般的なプラスミドに比べ、受け入れ可能な外来DNA断片のサイズが大きい点が最大の特徴です。

歴史的改良

初期のコスミドはCos領域が一つでしたが、後に二つのCos領域を持つように改良されました。これにより、挿入断片が正しく組み込まれた分子のみが効率的にパッケージングされるようになり、クローニング実験の効率が大幅に向上し、コスミドは実用的なベクターとして広く利用されるようになりました。

利用プロセス

コスミドを用いたクローニングでは、まず目的DNA断片とコスミドベクターを連結（ライゲーション）し、組み換えDNAを作製します。次に、組み換えコスミドDNAをバクテリオファージのパッケージングシステムで処理し、DNAをファージ粒子内に詰め込みます。最後に、パッケージングされたファージ粒子を大腸菌に感染させ、コスミドDNAを導入します。これにより、目的DNA断片が組み込まれた大腸菌クローン（形質転換体）が得られます。

主な用途

コスミドの大きなクローニング容量は、大規模なDNA断片を扱う研究に適しています。ゲノムDNAの断片化とライゲーションによるゲノムライブラリー構築や、二次代謝産物生合成遺伝子群のような大きな遺伝子クラスターの解析に利用されます。

関連用語

* コスミドライブラリー: ある生物のゲノムDNAをコスミドベクターに組み込んで作製された大腸菌クローン集団。

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