コスモス1443号

コスモス1443号は、1983年にソビエト連邦がサリュート7号宇宙ステーションへの補給ミッションに使用した大型無人宇宙船です。ロシア語ではКосмос-1443と表記されます。この機体は、本来「アルマース」という軍事宇宙ステーション計画のために開発された多目的宇宙船「TKS」の三度目の宇宙飛行であり、補給船としての運用は二回目にあたります。

船体設計

TKS宇宙船は、その名の通り重量約18トンにも及ぶ非常に大きな機体でした。元々、アルマース計画において宇宙飛行士の輸送や物資補給、および軌道上からの帰還を担うために設計されました。理論上は有人飛行も可能なように開発されていましたが、実際の運用では一度も宇宙飛行士を乗せることはありませんでした。

TKSは、二つの主要なコンポーネントで構成されていました。一つは、宇宙飛行士が搭乗・帰還するための帰還用VAカプセルです。このVAカプセルには、独立した軌道変更能力を与えるためのエンジンモジュールが結合していました。もう一つは、大量の物資や機材を搭載できる巨大なFGBモジュールです。このFGBモジュールもまた単体で軌道変更を行う能力を持っていました。このようなモジュール式の設計は、任務の要求に応じて柔軟に構成を変更し、様々なミッションに対応することを可能にしていました。

飛行の背景と目的

アルマース計画が最終的に中止された後、開発済みのTKS宇宙船はサリュート計画での利用へと用途が変更されました。コスモス1443号は、この用途変更されたTKSの一例として、当時ソビエトが運用していた長期滞在型宇宙ステーション「サリュート7号」とのドッキングミッションに投入されることとなりました。その主な目的は、サリュート7号への大量の物資補給と、ステーションでの活動によって発生した不要物や地球へ持ち帰るべき成果物（サンプルなど）の回収でした。

ミッションの実施経過

コスモス1443号は、1983年3月2日にカザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から、ソビエトの主力ロケットであるプロトンロケットによって宇宙へ打ち上げられました。順調な飛行の後、打ち上げからわずか二日後の3月4日には、軌道上のサリュート7号との自動ドッキングに成功しました。コスモス1443号はその後五ヶ月以上にわたってサリュート7号と結合した状態にあり、この期間中にステーションクルーによる物資の積み下ろしなどが行われたと考えられます。長期にわたる結合は、ステーションの運用期間を延長したり、より大型のモジュールとして機能したりする効果もあったと推測されます。

1983年8月14日、コスモス1443号はサリュート7号からドッキングを解除されました。その後、帰還用VAカプセルとFGBモジュールが分離されるプロセスに入りました。まずFGBモジュールは、8月19日に自らの軌道を制御して、地球の大気圏に再突入し、その大部分は燃え尽きて消滅しました。一方、帰還用VAカプセルは、FGBモジュールが大気圏突入した四日後の8月23日に大気圏への再突入を開始し、計画通りカザフスタン領内の予定された地点への着陸を果たしました。このカプセル内部には、サリュート7号での長期運用や様々な実験によって得られたサンプル、記録媒体など、約350キログラムにも及ぶ重要な物資が搭載されており、これらが無事地球へ回収されました。

TKSシリーズにおける位置づけ

コスモス1443号は、ソビエト連邦が開発・運用した大型多目的宇宙船TKSの、宇宙における三度目の飛行でした。TKS宇宙船による先行するミッションとしては、1981年4月に打ち上げられ、サリュート6号とドッキングしたコスモス1267号があります。また、コスモス1443号に続いてTKSが使用されたのは、1985年9月に打ち上げられ、再びサリュート7号とドッキングしたコスモス1686号が最後となりました。これらのTKSミッション、特にコスモス1443号のような補給・回収ミッションは、大型モジュール輸送や大量物資のやり取りにおいて、当時のソビエトの宇宙ステーション運用能力を大きく向上させる役割を果たしました。

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