コスモス869号

コスモス869号（Космос 869）

コスモス869号は、1976年にソビエト連邦によって宇宙空間へ打ち上げられた、ソユーズ7K-S型宇宙船の無人試験飛行機です。このミッションは、ソ連の宇宙開発プログラムにおける次世代有人宇宙船の開発に向けた重要なステップでした。

ソユーズ7K-S計画の背景

ソユーズ7K-S型宇宙船は、後のソユーズT型宇宙船の基礎となった改良型モデルです。当初の計画では、合計6機の機体（無人4機、有人2機）が打ち上げられる予定でしたが、最終的に計画は縮小され、無人試験機として以下の3機のみが軌道へ送られました。

コスモス670号
コスモス772号
コスモス869号

コスモス869号は、この3機のうち最後に打ち上げられた機体にあたります。これら一連の試験機には、ソビエト連邦の有人宇宙船として初めてデジタルコンピュータが搭載されており、飛躍的な技術的進歩を目指していました。

ミッション概要

コスモス869号は、バイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、約18日間にわたるミッションを実行しました。この飛行の主な目的は、ソユーズ7K-S型宇宙船の各種システムの性能確認、特に新しく搭載されたデジタルコンピュータの機能試験や、軌道上での様々な操作能力の検証でした。

軌道マヌーバ

ミッション中、コスモス869号は複数の軌道変更（マヌーバ）を実施しました。初期軌道は近地点196km、遠地点290kmでしたが、一連のマヌーバを経て軌道を変更していきました。記録されているマヌーバは以下の通りです。

最初のマヌーバで軌道は187km × 335kmへ変更（デルタV: 15 m/s）
その後、259km × 335kmへ（デルタV: 21 m/s）
さらに、260km × 345kmへ（デルタV: 2 m/s）
続いて、265km × 368kmへ（デルタV: 7 m/s）
次に、267km × 391kmへ（デルタV: 6 m/s）
最後の主要マヌーバで軌道は300km × 310km付近へ変更（デルタV: 32 m/s）

これらの合計デルタVは83 m/sに達し、宇宙船の姿勢制御システムや推進システムが計画通りに機能すること、そしてデジタルコンピュータによる軌道計算や制御が正確に行えることを確認する重要な試験となりました。

ミッション終了後、コスモス869号は無事に地球へ帰還しました。本機の試験データは、ソユーズ7K-S計画、ひいてはソユーズT型以降のソ連・ロシアの有人宇宙船開発に大きく貢献することとなりました。

参考文献:

Soyuz 7K-S - Encyclopedia Astronautica

もう一度検索