コソの点火プラグ

コソの点火プラグ（Coso Artifact）

コソの点火プラグ、通称コソ加工物は、1961年2月13日にアメリカのカリフォルニア州オランチャ近くのコソ山脈で発見された独特な点火プラグです。このプラグは、一時的にオーパーツとして話題になりました。オーパーツとは、考古学的にその時代には存在し得ない物品を指し、発見された場所や時期に対して意味が疑問視されるものを指します。

コソ加工物が大きな注目を浴びた理由の一つは、覆っていた石化した土が50万年前のものであると、ある地質学者によって鑑定されたという話です。しかし、この鑑定の信憑性には疑問が多く、発見者のヴァージニア・マクシーの言葉以外には確認できる情報がありません。このため、注目を集めつつも科学的な根拠に乏しい存在となっていました。

2000年6月、懐疑主義団体「パシフィック・ノースウェスト・スケプティクス」のメンバーであるピエール・ストロンバーグとポール・ハインリッヒは、コソ加工物をX線写真をもとに鑑定した結果、1920年代にアメリカのチャンピオン社によって製造された点火プラグである可能性が高いと結論しました。この鑑定結果は、アメリカ全土の点火プラグコレクターが参加し、メーカー名まで一致したものであり、いわゆる「50万年前の遺物」という見解を覆すものでした。

1920年代のコソ山脈周辺では採鉱活動が行われており、T型フォードなどの作業車両に使用される可能性がありました。したがって、その地区で発見された点火プラグが古代の遺物である可能性は考えにくいとされます。

さらに、コソ加工物が晶洞石の中から発見されたという主張もありましたが、晶洞石と点火プラグの性状には明確な違いがあり、実際には点火プラグを含む泥の塊に過ぎないとの意見もあります。1963年には期限付きで博物館に展示されたこともありましたが、学術的な調査はなかったことから、その意義には疑問が残ります。

スミソニアン博物館がプラグを引き取ることを検討した際には、所有者が高額な価格を提示したため、引き取られることはありませんでした。その後、プラグの行方は不明となっていましたが、2018年4月には発見者の家族から連絡があり、実物はまだ保管されていることが明らかになりました。

同年7月、ワシントン大学の地質学者がこのプラグの調査を行った結果、やはりチャンピオン社製の点火プラグであるとの見解が示されました。この一連の調査によって、コソの点火プラグは単なる誤解や神秘的な存在ではなく、歴史的な背景を持つ実用品であることが確認されたのです。

コソの点火プラグは、今なお科学的な興味を引きつけ続けており、過去と現在を結ぶ重要な証拠となっています。オーパーツとしての神秘から解放され、実用的な歴史の一部へと変わったこの点火プラグは、我々に人間の営みを再考させる材料を提供しています。

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