コソボ・メトヒヤ自治州 (1990年-1999年)

コソボ・メトヒヤ自治州とは

コソボ・メトヒヤ自治州（セルビア・クロアチア語: Аутономна Покрајина Косово и Метохија / Autonomna Pokrajina Kosovo i Metohija、アルバニア語: Krahina Autonome e Kosovës dhe Metohisë）は、セルビア共和国が主張する自治州です。ただし、1999年以降セルビアによる統治は行われておらず、2008年にはコソボ共和国として独立を宣言しています。しかし、セルビア政府はコソボの独立を承認せず、自国を構成する自治州であると主張し続けています。

歴史

1990年の憲法改正により、ユーゴスラビアを構成する各国と自治州で複数政党制が導入され、共産主義者同盟による一党支配が終わりました。コソボのアルバニア人は中央政府が実施する選挙への参加を拒否し、独自の選挙を実施。アルバニア人のボイコットにより投票が成立せず、コソボ・メトヒヤ州議会を開くことができなくなりました。

自治州は独自の公共放送を持つことができなくなり、セルビアの公共放送に統合。アルバニア語放送には圧力がかけられ、州立放送への資金提供が停止されました。新しい憲法によって民間放送が認められるようになりましたが、資金難と厳しい法的規制により活動は困難でした。

州の保有する企業はセルビア政府に移譲され、1990年9月には123,000人のアルバニア人労働者が職を解かれました。解雇者は政府、メディア、教師、医師、政府企業の労働者であり、ゼネラル・ストライキや集団蜂起を引き起こしました。解雇者の多くは民族的にアルバニア人でしたが、政府は彼らが単に古い共産主義の志向を持っていたためとしています。

古いアルバニア人の教育カリキュラムと教材は破棄され、セルビア人やその他のセルビアの少数民族のものと内容的に同一の新カリキュラムが導入されました。アルバニア語での教育は1992年に廃止され、1994年に再導入。プリシュティナ大学ではアルバニア語での教育が廃止され、アルバニア人の教師は一斉解雇されました。アルバニア人は州の学校をボイコットし、独自のアルバニア語の教育システムを組織しました。

コソボのアルバニア人は、自らの権利への攻撃に対して反発。アルバニア人による集団暴動や蜂起、民族間での暴力が頻発し、1990年2月には非常事態が宣言され、ユーゴスラビア軍が駐留し、蜂起を鎮圧するために警察官が大幅に増強されました。

1992年には非公認のコソボ共和国による選挙が行われ、イブラヒム・ルゴヴァが「大統領」として選出されました。しかし、この政府を承認したのはアルバニアのみでした。1995年、クロアチア紛争の嵐作戦によってクロアチアを追われた数千人のセルビア人がコソボに移住し、アルバニア人とセルビア人の対立はさらに深まりました。

過去にも、ユーゴスラビアやセルビアの体制に反発したアルバニア人による蜂起がプリシュティナで起こっていました。イブラヒム・ルゴヴァは非暴力による抵抗を呼びかけていましたが、後にアルバニア人による反対運動はルゴヴァとは逆の立場をとり武装闘争を主張するコソボ解放軍（UÇK）へと結びついていきました。これによってコソボ紛争が始まり、後のNATOによるユーゴスラビア空爆、国際連合によるコソボ暫定行政ミッション（UNMIK）創設へとつながっていきました。

1999年以降の状況

1999年以降、コソボにおいてセルビア人が住む一部地域では、プリシュティナにおかれたアルバニア人の支配する政府から事実上独立しています。セルビアの国旗や国章を使用し続け、セルビア本国の選挙にも参加しています。アルバニク / レポサヴィチ、ズヴェチャニ / ズヴェチャン、ズビン・ポトクの各自治体はセルビア人が支配しており、ミトロヴィツァ / コソヴスカ・ミトロヴィツァには対立するアルバニア人とセルビア人それぞれの政府が並存しました。

セルビア人地域は、「コソボ・メトヒヤのセルビア人地域連合」によって統合され、ミトロヴィツァが事実上の「首都」となっています。ミトロヴィツァには、セルビア人による中央政府機関「コソボ・メトヒヤ・セルビア国家議会」が設置されています。

コソボの独立宣言に反対する自治体は独自にコソボ・メトヒヤ自治州自治体共同体議会を結成していましたが、2013年にセルビアとコソボ間で締結されたブリュッセル合意により廃止され、代わりにコソボ政府公認のセルビア人自治体共同体が創設されることとなりました。

セルビア中央政府にはかつて「コソボ・メトヒヤ省」が置かれていましたが、その後コソボ・メトヒヤ事務局に改編されています。

コソボ・メトヒヤ自治州は5郡、30基礎自治体から構成されています。

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