コダック・エクトラ

コダック「エクトラ」カメラシリーズ

コダックのエクトラ（Ektra）は、同社のカメラブランドであり、110フィルムを使用する廉価版ポケットカメラシリーズと、135フィルムを使用する高級カメラシリーズが存在します。それぞれのシリーズで特徴的なモデルが展開されました。

110フィルム使用カメラ

1970年代後半から販売された110フィルム使用のエクトラシリーズは、手軽に撮影を楽しめるポケットカメラとして人気を博しました。多くのモデルが存在し、以下のようなラインナップがありました。

エクトラ1：25mm F11の固定レンズを搭載した基本モデル。
エクトラ2：エクトラ1のバリエーションモデル。
エクトラ10：エクトラ1のバリエーションモデル。
エクトラ200：1980年10月発売。20mm F11の固定焦点単玉レンズを搭載。
エクトラライト10：フラッシュ内蔵モデル。
エクトラライト30：フラッシュ内蔵モデル。
エクトラライト400：1980年10月発売。24mm F6.8の固定焦点3枚構成レンズを搭載。通常撮影時F9.5、フラッシュ撮影時F6.8の絞り。
テレ・エクトラ1：22mm F9.5と44mm F11の切り替え式望遠レンズを内蔵。
テレ・エクトラ2：テレ・エクトラ1のバリエーションモデル。
テレエクトラライト20：フラッシュ内蔵の望遠レンズモデル。
テレエクトラライト40：フラッシュ内蔵の望遠レンズモデル。
テレエクトラライト600：1980年10月発売。22mm F8と44mm F8の切り替え式望遠レンズを搭載。
エクトラマックス：このラインの最高級機で、非球面レンズを含む4枚構成の25mm F2.8固定レンズを搭載。

これらの110フィルムカメラは、コンパクトで使いやすく、手軽に写真撮影を楽しむことができました。

135フィルム使用カメラ

1941年に登場したエクトラIは、アメリカのコダックが初めて製造した135フィルムを使用するカメラでした。ドイツのライカやコンタックスを凌駕する機能を持っていましたが、その重量とサイズから商業的には成功しませんでした。

エクトラI：
24×36mm判（ライカ判）に対応。
50mmから254mmまで対応し、パララックスを自動補正するズームファインダーを内蔵。
専用マウントによるレンズ交換が可能。
距離計の基線長は168mmで、254mmレンズに必要な測距精度を確保。
日中のフィルム交換が可能なマガジンシステムを搭載。
布幕フォーカルプレーンシャッターを採用し、B、1〜1/1000秒のシャッター速度に対応。
レバーによるフィルム巻き上げ・巻き戻し機構。
設計はジョセフ・ミハリィ、デザインはウォルター・ドーウィン・ティーグが担当。
1948年までに2490台が生産され、一部はアメリカ軍で使用された記録がある。
エクトラII：
エクトラIのマイナーチェンジ版。
シャッター作動に関する問題を解決し、スプリングモーターによる巻き上げに対応（ただし、スプリングモーターは発売されず）。
フィルムマガジンは使用不可。
6台のみ製造され、そのうち1台はハワード・H・ベーカー・ジュニアが所有。

エクトラIは、その先進的な機能と優れた光学性能から、非常に評価の高いカメラです。

交換レンズ

エクトラ用の交換レンズは、全てコーティングされており、非常に良い発色が得られます。以下のようなラインナップがありました。

エクター 35mm F3.3：ヘリアー型3群5枚構成。
エクター 50mm F1.9：ダブルガウス型4群7枚構成。最短撮影距離3ftで、鏡胴の赤丸印のポッチを引っ張りヘリコイドを回すことで1.5ftまで可能。ただし、3ft未満で距離計連動させるにはオプションの近接撮影用距離計が必要。
エクター 50mm F3.5：3群4枚構成。
エクター 90mm F3.5：3群3枚構成。
エクター 135mm F3.8：2群4枚構成。
エクター 153mm F4.5：2群4枚構成。
エクター 254mm F4.5：試作のみ。

これらのレンズは、いずれも高い光学性能を持ち、美しい描写を実現します。

アクセサリー

エクトラには、様々なアクセサリーが用意されていました。

近接撮影用距離計：エクター 50mm F1.9専用。上下合致式で、上部分がファインダー、下の距離計部分は黄色に着色。非連動式で、像を上下合致させた後、レンズ鏡胴の赤文字が示す距離に合わせる。パララックスは測距に伴い自動補正。
発光機：カメラ本体にはシンクロ機能がないため、この発光機によりシンクロ撮影が可能になる。発光機から出ているコードをカメラのシャッターボタンに接続し、シャッターボタンを押すとまず発光、その後シャッターが切れる。電源は単3電池3本。
フィルムマガジン：フィルム交換を迅速に行うためのアクセサリー。
ピントグラスバック：フィルムマガジンと交換して使用し、ピントグラスをカメラ真後ろだけでなく、ウエストレベルでも見られるよう45°の鏡や、拡大ルーペが付いている。

これらのアクセサリーは、エクトラの撮影をより便利にし、表現の幅を広げるのに役立ちました。

まとめ

コダックのエクトラシリーズは、110フィルムのポケットカメラから、135フィルムの高級カメラまで、幅広いラインナップを展開しました。特にエクトラIは、その高度な機能と優れた光学性能から、クラシックカメラ愛好家にとって特別な存在です。エクトラの歴史は、コダックの技術力と革新性を象徴するものであり、今もなお多くのカメラファンを魅了し続けています。

参考文献

北野邦雄『現代カメラ新書No.3、世界の珍品カメラ』朝日ソノラマ
鈴木八郎『現代カメラ新書No.6、クラシックカメラ入門』朝日ソノラマ
田中長徳『銘機礼賛』日本カメラ ISBN 4-8179-0004-0
* 山縣敏憲『クラシックカメラで遊ぼう ボクが中古カメラ中毒者になったわけ』グリーンアロー出版 ISBN 4-7663-3322-5

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