コットン・ボウル

テキサス州ダラスのフェア・パーク内に位置するコットン・ボウルは、多目的に利用される歴史ある屋外球技場です。1930年に「フェア・パーク・スタジアム」として開場して以来、アメリカンスポーツやエンターテイメントの重要な拠点の一つとして機能してきました。プロチームや大学チームの常設本拠地ではない時期が長いですが、9万人を超える収容能力を持つ全米でも屈指の大規模スタジアムとして知られています。

立地とフェア・パークとの関係

本スタジアムは、毎年秋に開催される大規模イベント「テキサス州博覧会」の会場であるフェア・パークの中心部にあります。スタジアムが建設された当初からフェア・パークの名を冠していたことからも、博覧会との密接な関係性がうかがえます。博覧会期間中には、特に歴史あるカレッジフットボールの対戦が開催され、会場の目玉の一つとなっています。

歴史と進化

コットン・ボウルは1930年、既存の木造スタジアムの跡地に新たな施設として建設が始まり、同年10月に高校フットボールの試合で運用を開始しました。開業当初は約4.5万人の収容規模でした。1936年に現在の名称である「コットン・ボウル」へ改称されます。

1940年代後半には、地元の南メソジスト大学（SMU）フットボールチームで活躍したランニングバック、ドーク・ウォーカーの並外れた人気によってスタジアムへの観客が急増しました。この熱狂的な需要に応えるため、1948年と1949年に段階的にスタンドが拡張され、収容人数は約7.5万人にまで増加しました。これにより、スタジアムは「"The House That Doak Built"」（ドークが建てた家）という愛称で呼ばれるようになりました。

1970年にはフィールドに人工芝が敷設されましたが、1994年のFIFAワールドカップ開催が決定したことを受け、国際基準に適合させるために1993年に撤去され天然芝に戻されました。以来、天然芝の状態が維持されています。

2000年代には、伝統のライバル対決への注目度向上や施設の老朽化に対応するため、ダラス市との合意に基づき大規模な改修プロジェクトが実施されました。2008年に完了した改修では、主に未完成だった2階席部分が完成され、収容人数が公称92,100人まで拡大されたほか、新たな記者席やVIP施設、最新式のスコアボードなどが整備され、観客施設の改善が行われました。この改修後、2009年のレッド・リバー・ショウダウンでは96,009人という記録的な観客数を収容しました。

かつてはスタジアム名を冠するコットン・ボウル・クラシックをカレッジフットボールの主要なボウルシリーズに位置づける狙いから改修が進められましたが、1月の厳しい寒さなどが課題となり、クラシックは2010年にアーリントンの新スタジアムへと移転しました。現在も、様々な大規模イベントの会場として活用されています。

多彩な用途

コットン・ボウルはその歴史の中で、多種多様なイベントの舞台となってきました。

アメリカンフットボール
コットン・ボウル・クラシック: 1937年から2009年まで開催されたカレッジフットボールのポストシーズンゲームで、スタジアム名の由来ともなりました。多くの名勝負の舞台となりましたが、現在はアーリントンのAT&Tスタジアムで開催されています。
レッド・リバー・ライバルリー: NCAAカレッジフットボール屈指の伝統戦であるオクラホマ大学とテキサス大学オースティン校の対戦が、フェア・パーク期間中に中立地として毎年行われます。スタジアムの観客席は両校のファンによって50ヤードラインを境に分断される特徴的な光景が見られます。
ファースト・レスポンダー・ボウル: 2011年より開催されているカレッジフットボールのボウルゲームです。スポンサー名変更に伴い、過去には名称が異なる時期がありました。
プロチーム本拠地: NFLのダラス・カウボーイズ（1960-1971）やダラス・テキサンズ（1952）、AFLのダラス・テキサンズ（1960-1962）が過去にホームスタジアムとして使用しました。1966年にはNFLチャンピオンシップゲーム（カウボーイズ vs パッカーズ）の舞台にもなりました。
南メソジスト大学: 1932-1978年および1995-1999年の期間、ホームゲームを開催しました。特にドーク・ウォーカーが活躍した1940年代には圧倒的な人気を集めました。
ステート・フェア・クラシック: 歴史的黒人大学（HBCU）間の対戦（グランブリング州立大学 vs プレイリー・ヴュウA&M大学など）が行われるイベントです。大学のマーチングバンドによる「バトル・オブ・ザ・バンド」も人気が高く、地域のアフリカ系アメリカ人コミュニティにとって重要な文化的催事となっています。
高校フットボール: テキサス州内の高校フットボールにおける主要なプレーオフや決勝戦が長年にわたり開催されています。
パウダーパフ・フットボール: アルツハイマー協会へのチャリティとして行われる女性によるフットボールの試合が近年開催されており、特にブロンド対ブルネットの対戦が人気を集めています。

サッカー
1994年にはFIFAワールドカップの開催地の一つに選ばれ、計6試合が行われました。これはフィールドが天然芝に戻される契機ともなりました。
CONCACAFゴールドカップなどの国際サッカー大会や親善試合も開催されています。
プロサッカーチームのダラス・トルネード（NASL）やダラス・バーン/FCダラス（MLS）も過去に本スタジアムを一時的な本拠地としていました。

野球
1950年にはテキサスリーグの公式戦が開催され、往年の大スター選手が集結するイベントとして5万人を超える観客を動員しました。特に、タイ・カッブが健在ぶりを示すかのように観客席に打ち込んだ打球は、集まったファンを大いに沸かせました。これはマイナーリーグ史上でも屈指の観客数記録となっています。

アイスホッケー
2020年1月1日、NHLの屋外公式戦であるウィンター・クラシックが、アメリカ南部では初めて本スタジアムで開催されました。ダラス・スターズ対ナッシュビル・プレデターズの試合には、NHL史上2番目となる85,630人の観客が詰めかけました。

音楽コンサート
エルヴィス・プレスリー（1956年、当時のテキサス州最多記録）、ローリング・ストーンズ、U2など、歴史的なアーティストによる大規模コンサートが多数開催されてきました。
1978年から約10年間続いた大規模ロックフェスティバル「テキサス・ジャム」は、エアロスミス、ヴァン・ヘイレン、ジャーニーなど数多くの著名なバンドが出演し、8万人以上を収容する人気イベントでした。自由席のチケット制限のため、それ以降は集客数が8万人を超えることは少なくなりました。エリック・クラプトンのクロスロード・ギター・フェスティバルも行われています。

その他
ドラム・コープスの世界選手権やプロレス興行など、多様なイベントが開催されてきました。

ポピュラーカルチャーでの登場

コットン・ボウルは、その象徴的な姿から多くの映像作品やメディアに登場しています。

映画『タッチダウン』（1977年）や『悪魔のいけにえ』（1986年）の撮影に使われました。
テレビドラマ『ダラス』や、高校フットボールを描いた人気シリーズ『Friday Night Lights』の最終回にも登場しています。
エミー賞受賞テレビ映画『The Jesse Owens Story』（1984年）では、1936年のベルリンオリンピックのシーンのロケ地として使用され、当時の雰囲気を再現するために大規模な演出が行われました。
ロックバンド、ジャーニーやポイズンのミュージックビデオの舞台ともなりました。
* リアリティ番組『4th and Long』の一部もここで撮影されました。

現在も、多様なイベントの会場としてダラスのランドマークであり続けています。

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