ナッシュビル・プレデターズ

ナッシュビル・プレデターズ：音楽の街に根ざす氷上のハンターたち

ナッシュビル・プレデターズは、アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルを本拠地とするプロアイスホッケーチームであり、ナショナルホッケーリーグ（NHL）のウェスタン・カンファレンス、セントラル・ディビジョンに所属しています。そのチーム名には、ナッシュビルの地で発見された古代の遺物が深く関わっています。

チームの誕生と名前の由来

チーム名は、アムサウス・センター（現ブリヂストン・アリーナ）の建設中に、約1万年前に絶滅したとされるサーベルタイガー（スミロドン）の牙と足の骨が発掘されたことに由来します。この発見が、ナッシュビルの地に新たなプロスポーツチームを誕生させる象徴となったのです。

地元のファンからは「Preds（プレッズ）」という愛称で親しまれ、チームマスコットはGnash（ナッシュ）という名の青いサーベルタイガーです。ちなみに、Gnashの「G」は発音しません。

パワープレー時には、場内アナウンスで「ザ、プレデターズ　アー、オ～ン・ザ・パワープレー！」とコールされ、ファンも一体となって「オ～ン・ザ・パワープレー！」と合唱する一体感が生まれます。

また、ナッシュビルが「Music City」として知られるように、試合の各ピリオド間にはバンドによる生演奏が行われ、観客を楽しませています。

チームの歴史

プレデターズの初試合は1998年10月10日、ホームで行われたフロリダ・パンサーズ戦でした。結果は0対1で敗れましたが、ここからチームの歴史が始まりました。

チーム発足時から在籍していたデービッド・レグワンド（チーム史上初のドラフト指名選手）と、ヘッドコーチのバリー・トロツは2014年にチームを離れましたが、ゼネラルマネージャーは変わることなくチームを支え続けています。

誘致の背景

1995年終盤には、ニュージャージー・デビルスがナッシュビル・アリーナ（現ブリヂストン・アリーナ）に移転するという噂が流れました。ナッシュビルはデビルスに移転の誘致として2,000万ドルを提示しましたが、デビルスはニュージャージー州とのリース契約を終了することができず、移転は実現しませんでした。

NHL拡張とプレデターズの加入

デビルスの獲得に失敗した後、NHL理事のゲイリー・ベットマンは、ナッシュビルが拡張の候補地になるだろうと述べました。当初、ナッシュビルはホッケーではなくNBAのサクラメント・キングスの獲得を目指していましたが、これも失敗に終わりました。しかし、1996年にアリーナが開業すると、1997年1月にはウィスコンシン州の実業家クレイグ・レイポルド率いるグループがNHL拡張に関して公式発表を行いました。ベットマンとNHL職員がナッシュビルのアリーナを訪れた際には、数千人もの人々がアリーナ前の広場で歓迎しました。

1997年6月、NHLはオハイオ州コロンバス（コロンバス・ブルージャケッツ）、ジョージア州アトランタ（アトランタ・スラッシャーズ）、ミネソタ州ミネアポリス・セントポール都市圏（ミネソタ・ワイルド）、そしてナッシュビルへの拡張を決定しました。NHLは、1998年3月31日までに1万2千枚のシーズンチケットを販売することを条件に、ナッシュビルのチームの試合を1998年に開始する予定としました。上記4都市の中で、アリーナが完成していたのはナッシュビルだけだったため、最初に試合を開始することになったのです。

1ヶ月後、レイポルドはワシントン・キャピタルズの元ゼネラルマネージャーであるデイヴィッド・ポイルをチームの初代ゼネラルマネージャーに任命しました。さらに8月6日には、ポートランド・パイレーツのヘッドコーチであったバリー・トロツがチームの初代ヘッドコーチに任命され、ミッチ・コーンが初代ゴールコーチに任命されました。

1997年9月25日、レイポルドとチームの会長ジャック・ディラーは記者会見で、サーベルタイガー（スミロドン・フロリダナス）を基にした新しいロゴを発表しました。このロゴは、1971年にナッシュビルのダウンタウンでファースト・アメリカン国立銀行（現USBタワー）建設中にスミロドンの頭部の一部が発見されたことに由来します。

ロゴ発表後、チーム名のファン投票が行われました。75の候補から「アイス・タイガース」、「フュアリ」、「アタック」の3つに絞られましたが、レイポルドの提案により「プレデターズ」が追加されました。そして11月13日、レイポルドは記者会見において、自身が挙げた候補が選ばれ、「ナッシュビル・プレデターズ」となることを発表したのです。

しかし、初試合前には早くも移転の噂が流れ始めました。レイポルドの計画により、カナダのアルバータ州エドモントンを拠点とするエドモントン・オイラーズがナッシュビルに移転し、プレデターズがテキサス州ヒューストンへ移転するというものでした。これに対し、レイポルドは「そんな機会はない」と一蹴しました。

NHL加盟の費用8,000万ドルのうち、ナッシュビル市が31.50%を負担することになりました。市がアリーナを操業することになり、約380万ドルを負担することになったのです。人件費は1,500万ドルで、NHL最安値となりました。

1998年10月10日、プレデターズはフロリダ・パンサーズとのホームゲームで1対0で敗れました。プレデターズ最初の5試合で完売したのはこの試合のみでした。3日後の10月13日、カロライナ・ハリケーンズとの試合で3対2で初勝利を挙げました。フォワードのアンドリュー・ブルネットが初ゴールを決めました。

プレデターズの歩み

（中略）

チームを支えるもの

チームはセンテニアル・スポーツプレックスで練習を行っています。2007-08年のシーズンには新たな縞の入ったジャージが作られました。ロゴも色も変更はありませんでした。アウェイ用のジャージにもロゴがついています。2011-12年のシーズンにはジャージのデザインや色合いを変更しました。ホームジャージは明るい黄金色地に濃紺と白の線が入り、アウェイジャージは白地に黄金色と濃紺の線の入ったものです。またロゴも白、黄金色、濃紺で作られたものに変わりました。ナッシュビルの音楽の歴史を物語るように、新しいジャージの肩にはテネシー州の旗の三ツ星の入ったギターのピックが描かれ、背番号にはギターの弦の絵が横断し、首回りの内側にはピアノの鍵盤が描かれています。今回は第3のジャージは作られていません。

ファンとの絆

デトロイト・レッドウィングスのタコ投げの伝統にならい、プレデターズのファンはチーム愛を表明するため、アメリカ南部の名物ナマズをアイスリンクに投げ入れます。2003年10月30日に『テネシアン』紙で初めて報じられ、2003年11月13日の初ゴールの際には少なくとも4匹のナマズがリンクに投げ込まれました。

ブリヂストン・アリーナのセクション303は「セルブロック」と呼ばれ、「NHLで最もうるさいアリーナで、最もうるさいセクション」とされています。ファンが独自に組織したグループですが、プレデターズ事務局にも認識されており、セクション後ろの壁に事務局作成の大きなバナーが貼られています。

2008年4月3日、セントルイス・ブルースと対戦したレギュラーシーズン最終ホームゲームで、満席のソメイ・センター（現ブリヂストン・アリーナ）で4:30に3対2でリードしており、テレビ中継でファンはずっとスタンディングオベーションを続けました。プレデターズはそのまま勝ち抜けてプレーオフに進出し、以降最後のテレビ中継にはスタンディングオベーションすることが伝統となりました。

プレデターズのマスコットはナッシュ（Gnash）という青いサーベルタイガーです。1998年に初登場し、高速の懸垂下降、ジップライン、振り子などのスタントを特徴としており、スコアボードの下やリンクのすぐそばに登場します。

マスコット以外に、プレデターズのファンはパワープレーの際に「ファン・フィンガー」（この場合のファン（fang）は牙の意）で応援します。売店で手袋型のものを購入することもできますが、多くの観客は両手でピースを作り、人差し指と中指を少し折って牙のような形にし、上下に振って威嚇するようにします。この時BGMにはアルフレッド・ヒッチコックの映画『サイコ』のホラー音楽が流れます。

終わりに

ナッシュビル・プレデターズは、そのユニークな名前の由来や、音楽の街ならではのチーム文化、そして熱狂的なファンに支えられ、NHLで独自の存在感を放っています。今後の活躍にも目が離せません。

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