コネスタビレの聖母

コネスタビレの聖母

『コネスタビレの聖母』は、イタリアの名画家ラファエロ・サンツィオによって1504年頃に制作された作品で、盛期ルネサンスの代表的な絵画の一つです。この作品は油彩であり、聖母子をテーマにした非常に小型のトンド形式の絵画として知られています。作品名は、所有者のひとりであるシピオーネ・コネスタビレ・デッラ・スタッファ伯爵に由来しています。

絵画は、ラファエロがまだ自身のスタイルを確立する前の未熟な時期に制作されたにもかかわらず、その構図は非常に美しく、技術的にも洗練されたものとなっています。絵の中心には聖母マリアが描かれ、彼女は膝の上に幼児キリストを抱いています。聖母は特徴的な赤いドレスと青いヴェールをまとい、優しい眼差しでキリストを見つめています。キリストは母の腕に寄り添いながら、開かれた本のページをめくろうとしています。この本は、彼らの運命についての暗示を含んでいるかのような存在感を持っています。

絵画の背景には、ウンブリア地方特有のなだらかな丘陵が広がり、遠景には雪を冠した山々が見えます。この景観は冬の季節を象徴し、静謐な雰囲気を醸し出しています。聖母とキリストの姿は、背景の自然と見事に調和し、見る者に深い感動を与えます。

また、コネスタビレの聖母は独特の円形のトンド形状を持っており、周囲にはラファエロのデザインによる装飾が施されています。この作品はオリジナルの額縁に納められた状態で保存されていますが、絵画が保存されている過程で、板絵にはひび割れが見られたため、エルミタージュ美術館に持ち込まれた際には支持体が板からキャンバスに移し替えられました。この移し替え作業によって、かつて描かれていたものが本ではなく、林檎やザクロであることが明らかになりました。

作品の来歴については、画家ドメニコ・アルファニの叔父であるアルファノ・ディ・ディアマンテのために描かれたという説があります。その後、約400年間ペルージャにとどまった後、シピオーネ・コネスタビレ伯爵の所蔵となりました。伯爵は経済的な困難に直面し、最終的には1869年にエルミタージュ美術館に売却を打診しました。のちにロシア皇帝アレクサンドル2世によって購入され、皇后に贈られました。

この名作は、1881年にエルミタージュ美術館に遺贈された際、その重要性が改めて認識されました。今日でも、コネスタビレの聖母はラファエロの作品の中でも屈指の魅力を持ち、訪れる人々を魅了し続けています。彼の作品に触れることで、ルネサンス期の美術における高度な技術と心情の込められた表現を体感することができます。

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