コピラス

コピラス（COPILAS）

コピラスは、任天堂が1971年に設計・販売した簡易複写機であり、特に家庭向けや小規模な事業所に注目されました。その魅力は、低価格でありながら、手軽にコピーができるというものでした。

概要

初代コピラス（モデルNCM-D-B4）は、1971年7月22日に価格9,800円（2023年の価値で約31,455円に相当）で市場に登場しました。この機種は、青焼きコピーとも称されるジアゾ式複写機の一種であり、特殊な30ワット蛍光灯を用いた光源密着方式を採用しています。コピー幅はJIS B4判にまで対応しており、様々な用途に使えました。

ジアゾ式複写機の原理

ジアゾ式複写機の基本的な仕組みは、原紙と感光紙を密着させ、紫外線を照射して感光させることにあります。これにより、複写紙上のジアゾ化合物（文字の部分）が現像され、発色します。ただし、原紙に光を透過させてコピーを行う性質上、両面印刷や書籍の複写は不可能でした。

コピラスでは、ジアゾ方式の中でも「湿式」という手法が採用されています。この方法の利点は、構造がシンプルでコストを抑えやすいこと、さらにはコピー代もリーズナブルである点です。しかし、その一方で、コピー1枚に約1分を要し、発色が鮮明でない上、長期間の保存が難しいという欠点も抱えていました。

発展とその後

コピラスにはその後、1972年に両面印刷が可能な改良版「コピラスドライ」、さらにカラー印刷が可能な「フォトコピラス」、1973年にはオフィス向けモデルの「コピラスST」などが続いて登場しました。

背景

1960年代、任天堂は伝統的な「かるた」事業の成長に限界を感じていました。そのため、エレクトロニクス分野の可能性に目を向けるようになりました。1970年には光線銃SPが大ヒットを記録し、これは新たなビジネスの起点となりました。しかし、持続可能な利益源を確保するため、さらに新規事業への進出を模索していました。

コピラスの設計は、文具店を利用した流通網を基に家庭市場へのアプローチをしつつ、事務機市場にも進出する計画でした。

反響

ジアゾ式複写機は、他の複写機と比べて安価であるにもかかわらず、当時の平均単価が約7万円だった中で、コピラスが10,000円を切る価格は非常に話題になりました。これによって学生や小さな事業所から広く受け入れられ、発売から2週間で約9万台の売り上げを記録しました。

しかし、現実には現像液による感光紙への写りが思わしくなく、ユーザーからの不満が相次ぎました。そのため、任天堂は商業面での成功は掴めませんでしたが、コピラスは町内会活動や大学生のサークル活動、同人誌作りにおいては、その安価なコピー機能が受け入れられ、一定の需要があったと言われています。

この時期、任天堂はコピラスや光線銃シリーズ、家庭用のわたあめ製造器などを通じて、エレクトロニクスに関する技能を身に付け、その後の「ゲーム&ウオッチ」や「ファミコン」の成功に寄与することとなりました。

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