青焼

青焼き：ジアゾ式複写技術とその歴史

青焼き（blueprint）は、かつて図面複製の中心的な技術として活躍したジアゾ式複写技法のことです。光の明暗が青色の濃淡で表現されることからこの名が付けられ、使用された複写機も「青焼き機」と呼ばれていました。

青焼きの原理

青焼きの技術は、芳香族ジアゾニウム塩の光分解反応を利用しています。原稿と感光紙を重ねて露光することで、光を通さない部分（文字や線）が感光剤の変化を抑え、潜像を形成します。その後、現像液との化学反応によって青色の発色・非発色の差が生じ、画像が複製されます。

青写真とは異なり、青焼きは陽画（ポジ）となります。初期の青焼きでは、アンモニア水溶液などを現像液として用いていましたが、一般向け製品では、感光紙に現像液をマイクロカプセルやフィルムシートで封入し、露光後に熱や圧力によって混合・反応させる方法が主流となりました。これにより、特別な現像機がなくても、アイロンなどで発色させることが可能になっています。

青焼きの化学反応

青焼きの化学反応は、紫外線によってジアゾ基が脱離する芳香族ジアゾニウム塩の性質を利用しています。この反応は、紺青法と同様に潜像を作ります。紫外線に当たっていないジアゾニウム塩は、フェノール化合物などとの結合によって青いアゾ色素を生成します。この反応はアルカリ性条件下で効率的に進みます。

化学反応式を以下に示します。

R-N=N-Cl（黄色） + H-R'-OH → R-N=N-R'-OH（濃青色）

感光紙には、芳香族ジアゾニウム塩とフェノール化合物があらかじめ仕込まれており、アンモニア水溶液や蒸気によって現像することができます。アルカリ剤を一緒に仕込んで熱で混合する感光紙であれば、複写機なしでも発色させることが可能です。原理上は陽画しか生成しませんが、発色物質を変えることで黒色など他の色にも対応できます。また、光の波長を変えることでカラーコピーも可能です。

青焼きの歴史

青焼き技術は、1842年にジョン・ハーシェルが青写真を発明したのち、1920年にドイツでジアゾ式複写機が発明されたことで発展しました。1927年には理化学研究所で紫紺色陽画感光紙が発明され、これが後の青焼き技術の主流となります。1951年にはコピア（現在のキヤノンファインテックニスカ）が世界初の小型湿式事務用ジアゾ式複写機を販売開始。しかし、1955年にゼロックス社がPPC複写機を開発すると、徐々にジアゾ式複写機は市場から姿を消していきました。

「青焼き」と「白焼き」の意味の変化

「青焼き」と「白焼き」という用語は、時代によって意味が変化しています。初期の段階では、青焼きはヘキサシアノ鉄酸塩による青写真の陰画（青地に白線）、白焼きはジアゾ式コピーによる陽画（白地に青線）を指していました。乾式ジアゾ式複写機が普及すると、青焼きは湿式コピー（青く発色し、地も青っぽい）、白焼きは乾式コピー（褐色や黒色で地は白）を指すようになりました。さらに、PPC方式の大判コピー機が普及すると、青焼きはジアゾ式コピー全般、白焼きはPPC方式コピーを指すようになりました。現在では、「紙焼き」や「皿焼き」といった表現が用いられることが増えています。

青焼きの用途

青焼きは、書類や図面の複製に広く利用されてきました。特に、図面複製においては、原版と重ねて露光するため歪みが少なく、大判紙にも対応できることから、製版分野などで重宝されました。また、写真製版におけるフィルムチェックにも使用されていました。業務用では乾式複写機が、事務用では湿式複写機が多く用いられていました。ランニングコストの低さから、PPC複写機普及後も大学や官公庁などで長く利用されていました。

まとめ

青焼きは、ジアゾ式複写技術に基づく図面複製技術として、長年にわたり重要な役割を果たしてきました。その化学的原理、歴史的変遷、そして用途を知ることで、現代のデジタル技術が普及する以前の技術革新の一端を垣間見ることができます。

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