コピー・ワンス

コピー・ワンスとは

「コピー・ワンス」とは、デジタルコンテンツの複製を1世代のみに制限する技術です。これは、著作権保護を目的としたコピーガードの一種であり、特に放送コンテンツの録画において適用されていました。

コピー・ワンスの仕組み

コピー・ワンスが適用されたコンテンツは、最初に録画したものが「1世代目のコピー」と見なされます。この1世代目のコピーから、別の媒体への複製は原則として認められず、コンテンツを別の場所に移動させる「ムーブ」のみが許可されます。ムーブを行うと、元のコンテンツは消去されます。

この仕組みは、2004年からBSデジタル放送や地上デジタル放送の多くの番組に適用されました。ただし、一部の番組では、1世代目のコピーすら許可しない「コピー・ネバー」が適用されていました。その後、2008年に「ダビング10」が導入され、BSデジタル放送の有料放送や一部のCSデジタル放送でのみコピー・ワンスが残るようになりました。

コピー・ワンスの問題点

コピー・ワンスには、以下のような問題点がありました。

利便性の低下: ハードディスクに録画した番組を、複数のDVDやBlu-ray Discにバックアップすることができません。また、ムーブ中に停電や機器の不具合が発生すると、コピー先とコピー元の両方のコンテンツを失ってしまうリスクがありました。
メディアの制約: ムーブ先のメディアから、さらに別のメディアにコンテンツを移動することができません。そのため、新しいメディア規格への移行や、コンテンツの再利用が困難でした。
画質劣化: 録画した番組を携帯機器で視聴するために画素数を減らしてムーブすると、元の画質の映像は失われてしまいます。

これらの問題点から、コピー・ワンスによるムーブ作業は、慎重かつ計画的に行う必要があり、録画機器の使い勝手を大きく損なう要因となっていました。例えば、以下のような点に注意する必要がありました。

高品質なディスクを使用する。
再エンコードが必要な場合は、可能な限り高画質を維持できる設定にする。
停電を避けるために、他の家電製品の使用を控える。
他の録画予約と重ならない時間帯を選ぶ。

また、コピー・ワンスの制約により、CMカットのような基本的な編集作業も難しく、高度な編集は事実上不可能でした。

日本と海外の比較

デジタル無料放送に厳しい制限を設けているのは、世界的に見ても日本だけです。例えば、アメリカでは地上デジタルテレビ放送に対し、コピー回数の制限はなく、コンテンツの暗号化も施されていません。代わりに、ブロードキャストフラグという仕組みを用いて、インターネット上での不正な流通を防止しています。

ダビング10の導入

このようなコピー・ワンスの問題点を改善するため、総務省の情報通信審議会で議論が行われ、「ダビング10」が導入されました。ダビング10では、デジタルコンテンツのコピーが9回まで許可され、10回目にムーブを行うことができます。これにより、コピー・ワンスによる不便さは大幅に緩和されました。

ただし、文化庁の著作権分科会では、ダビング10の導入と引き換えに、私的録音録画補償金制度の継続と対象製品の拡大を主張しています。

ムーブバック機能

2010年頃からは、ブルーレイディスクからハードディスクへの書き戻しを可能にする「ムーブバック」機能が搭載されたレコーダーも登場しました。これにより、コンテンツの移動の自由度はいくらか向上しました。

関連技術・用語

コピーガード: デジタルコンテンツの不正な複製を防ぐ技術全般。
ダビング10: デジタルコンテンツのコピーを9回まで許可する仕組み。
コピー・ネバー: デジタルコンテンツのコピーを一切許可しない仕組み。
ムーブバック: ブルーレイディスクからハードディスクへの書き戻し。
B-CAS: 日本のデジタル放送の視聴に必要なICカード。
CPRM: コピーガード技術の一つ。
EPN: 電子番組ガイド。

コピー・ワンスは、デジタルコンテンツの著作権保護と利便性のバランスを模索する過程で生まれた技術であり、その後、ダビング10やムーブバック機能の導入によって、より柔軟な運用が可能になりました。

もう一度検索