ダビング10

ダビング10：デジタル放送の著作権保護と私的利用のバランス

ダビング10とは、日本の地上デジタル放送および衛星デジタル放送における著作権保護技術です。2008年7月4日より運用開始され、デジタル放送番組の録画・複製に関する新たなルールとして導入されました。正式名称は「コピー9回＋ムーブ1回」で、デジタル機器での録画後、DVDやBDなどへのコピーを9回まで、そして1回だけ別の機器へのデータ移動（ムーブ）を許可する仕組みです。

コピー・ワンスからの課題とダビング10の導入

デジタル放送開始当初は、録画を1回のみ許可する「コピー・ワンス」が採用されていました。しかし、録画失敗のリスクや利用者の利便性といった問題点が指摘されていました。ダビング10は、これらの問題を軽減する暫定措置として導入されたのです。

ダビング10の仕組み：世代管理とコピー制限

ダビング10では、録画機器（HDDなど）をコピーの起点とします。録画機器から他の媒体へのコピーが1世代目となり、この世代でのコピー回数を9回、ムーブを1回に制限することで、無制限な複製を防止します。2世代目以降のコピー（孫コピー）は禁止です。

コピー回数の制限は、デジタル接続（i.LINKなど）によるデジタルコピーと、機器内蔵の記録媒体へのコピーに適用されます。アナログ接続でのコピーは回数にカウントされませんが、ダビング10の世代管理の対象外となり、コピー元を問わずそれ以降のコピーは禁止されます。

導入過程における困難：メーカーと著作権団体の対立

ダビング10導入においては、著作権者への私的録音録画補償金制度をめぐるメーカーと著作権団体間の対立が大きな障害となりました。著作権団体は、コピー回数の増加に伴い補償金の対象を拡大すべきと主張した一方、メーカー側は、制限が残る以上、追加の補償金支払いは不要だと反発しました。この対立は、ダビング10の運用開始を遅らせる一因となりました。

さらに、関係省庁間の調整不足も課題でした。放送局を所管する総務省、著作権問題を扱う文部科学省、メーカーを所管する経済産業省の連携が不十分であったため、合意形成に時間を要しました。

ダビング10対応機器とソフトウェアアップデート

ダビング10に対応するには、録画機器がダビング10対応である必要があります。ダビング10導入前に販売された機器についても、メーカーによってはソフトウェアアップデートにより対応が可能な場合があります。アップデート方法は、放送波経由とインターネット経由の2種類があります。アップデート後は、機器表示でダビング可能回数が表示されるようになるなど、ダビング10への対応を確認できます。

ダビング10の技術的側面：コピー制御信号

ダビング10では、コピー制御信号（CCI）を用いて、録画の可否を制御します。CCIに新たな制御フラグを追加することで、放送局はダビング10対応の録画を許可するか否かを個別に設定できます。有料放送などでは、ダビング10での録画を禁止する設定が採用されています。

ダビング10の現状と課題

ダビング10は、デジタル放送の著作権保護と私的利用のバランスを図るための重要な技術です。しかし、導入過程における困難や、アナログコピーの制限、メディアの旧世代化による再生困難といった課題も存在します。

まとめ

ダビング10は、デジタル放送における著作権保護と私的利用のバランスを図るための複雑な制度です。その導入過程には多くの困難がありましたが、デジタルコンテンツの利用環境を整備するための重要なステップとなりました。しかしながら、技術的な制限や、権利者と利用者の間の利害調整など、今後の課題も残されています。

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