コマイトー

コマイトー（古希: Κομαιθώ, Komaitō）は、ギリシア神話に登場する悲劇の女性です。彼女はタポス王プテレラーオスの娘として生まれました。物語において、コマイトーは敵対する将軍アムピトリュオーンに激しい恋心を抱きます。しかし、彼女の父であるプテレラーオスは、海の神ポセイドーンから授かった黄金の毛髪を持っており、その毛髪のおかげで不死身でした。このため、アムピトリュオーンはプテレラーオスとの戦いで苦戦を強いられていました。

コマイトーの愛は盲目的なものでした。彼女は愛するアムピトリュオーンのために、父プテレラーオスの不死の源である黄金の毛髪を密かに切り落とすという大胆な行動に出ます。これによりプテレラーオスは不死の力を失い、アムピトリュオーンはついに勝利を収め、タポスを制圧することに成功します。

しかし、コマイトーの献身的な愛は報われることはありませんでした。彼女は、アムピトリュオーンによって直ちに殺されてしまうのです。この悲劇的な結末は、コマイトーの愛がもたらした、皮肉な結果と言えるでしょう。彼女の行動は、父への裏切りと愛する人への献身が、最終的には破滅をもたらすという、複雑な人間性を描き出しています。

コマイトーの物語は、ギリシア神話における愛と裏切り、そして運命の残酷さを象徴する逸話として、後世に語り継がれています。彼女の行動は、時に愛が人を盲目にし、悲劇へと導く力を持つことを示唆しています。この物語は、アポロドーロスの『ギリシア神話』や高津春繁の『ギリシア・ローマ神話辞典』などの古典文献に記録されており、古代ギリシアの倫理観や価値観を理解する上で重要な資料となっています。

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