コマヤグア

ホンジュラス共和国の中部に位置するコマヤグアは、同名のコマヤグア県の県都です。この都市は、かつてホンジュラスの首都として重要な役割を担った歴史を持つ場所です。スペインのコンキスタドールによって1537年12月8日に建設されたコマヤグアは、早くからこの地域の中心地としての性格を確立しました。

植民地時代を経て、19世紀に中央アメリカ連邦がスペインから独立した際には、ホンジュラス州の州都がここに置かれました。その後、ホンジュラスが単独で独立国家となると、首都の座を巡る争いが激化します。コマヤグアを拠点とする保守党と、より南に位置するテグシガルパを拠点とする自由党が国の主導権を巡って対立し、政権交代のたびに首都が両都市間を移転するという不安定な時期が続きました。この首都争いは、1880年に最終的にテグシガルパが恒久的な首都として定められるまで続きました。この決定以降、コマヤグアが再び国の首都となることはありませんでした。

2013年時点での人口は約9万3千人を数え、現在もコマヤグア県における行政や商業の中心地として機能しています。都市の周辺には豊かな自然が広がっており、外部リンクにも挙げられているように、モンターニャ・デ・コマヤグア国立公園（Parque Nacional Montaña de Comayagua, PANACOMA）のような自然保護区が存在し、多様な生態系を育んでいます。かつての首都として築かれた歴史的な建築物も多く残されており、往時の繁栄を偲ばせます。

コマヤグアの歴史において、特に近年発生した悲劇的な出来事として記憶されているのが、2012年に市内の刑務所で発生した大規模な火災です。この火災は、2012年2月14日の夜に突如として発生し、原因は特定されていません。当時の収容者数は852人に達しており、これは刑務所の正規の定員を大幅に超過した過密状態であったとされています。火災は瞬く間に広がり、多くの収容者が逃げ場を失いました。

この惨事により、355人もの収容者が命を落としました。犠牲者の数は、収容者全体の半数近くに上るものであり、その衝撃は計り知れませんでした。この刑務所火災は、発生当時において世界の刑務所で起きた火災としては史上最悪の犠牲者を出した事件として記録されています。この出来事は、ホンジュラス国内の刑務所が抱える劣悪な環境や過剰収容といった問題を浮き彫りにし、国際社会からも大きな注目を集めました。

コマヤグアは、スペイン植民地時代から続く長い歴史を持ち、かつてホンジュラスの首都として栄えた古都です。首都機能をテグシガルパに譲った後も、地域の中心地として発展を続けています。歴史的な街並みや周辺の豊かな自然といった魅力を持つ一方で、近年発生した痛ましい刑務所火災のような悲劇も経験しています。この都市の歴史と現在を知ることは、ホンジュラスという国の歩みや抱える課題を理解する上で重要な手掛かりとなります。

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