コミュニケ (アルバム)

ダイアー・ストレイツ『コミュニケ』

1979年に発表された『コミュニケ』は、イギリスを代表するロックバンド、ダイアー・ストレイツが世に送り出した通算2枚目のスタジオ録音アルバムです。

制作背景

本作のプロデュースは、著名なジェリー・ウェクスラーとバリー・ベケットが共同で担当しました。特にウェクスラーは、ダイアー・ストレイツがワーナー・ブラザース・レコードと契約を結ぶきっかけを作った人物として知られています。当時、アシスタントであったカリン・バーグからバンドの音楽を推薦され、その才能を見抜いたウェクスラーは、レコード会社に契約を強く進言したのでした。

アルバムのレコーディング作業は、1978年12月にバハマのナッソーにあるコンパス・ポイント・スタジオで行われました。その後、ミキシングのため、1979年1月にはアメリカ合衆国アラバマ州の伝説的なマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオに場所を移しています。ウェクスラーは後にこのアルバムの制作を振り返り、「ダイアー・ストレイツは、細部にまで気を配った演奏をすれば、イギリス出身のミュージシャンであってもいかにファンキーなサウンドを生み出せるかを示す好例となった」と評しています。

収録曲の中でシングルカットもされた「翔んでる! レディ（Lady Writer）」は、バンドの中心人物であるマーク・ノップラーがテレビ番組で作家マリナ・ワーナーの姿を目にしたことからインスピレーションを得て作られた楽曲です。

反響と商業的成功

『コミュニケ』は、前作『ダイアー・ストレイツ』に続いて世界的に大きな反響を呼びました。

イギリス本国では、全英アルバムチャートで最高位5位を記録し、実に32週間にわたってチャート圏内に留まるロングセールスとなりました。アメリカ合衆国でも、Billboard 200チャートで最高11位に達し、その売り上げはRIAAによってゴールドディスクに認定されています。

特にヨーロッパ大陸での人気は絶大でした。スウェーデンのアルバムチャートでは、通算6回、合計12週にわたって第1位を獲得する快挙を達成。ドイツのアルバムチャートでも4週連続で首位に輝きました。ノルウェーのアルバムチャートでは、15週連続でトップ5圏内を維持し、そのうち8週間は2位をキープするなど、多くの国でチャート上位にランクインしました。

本作からは「翔んでる! レディ（Lady Writer）」がシングルとしてリリースされました。このシングルは、全英シングルチャートで51位、アメリカのBillboard Hot 100チャートで45位にそれぞれランクインしています。

収録曲

アルバムに収録された全ての楽曲は、マーク・ノップラーによって作詞・作曲されました。

1. かつて西部で (Once Upon a Time in the West) – 5:25
2. ニュース (News) – 4:14
3. 行かないで (Where Do You Think You're Going?) – 3:49
4. コミュニケ (Communiqué) – 5:49
5. 翔んでる! レディ (Lady Writer) – 3:45
6. エンジェル・オブ・マーシー (Angel of Mercy) – 4:36
7. ポートベロの少女 (Portobello Belle) – 4:29
8. シングル・ハンデッド・セイラー (Single Handed Sailor) – 4:42
9. フォロー・ミー・ホーム (Follow Me Home) – 5:50

参加ミュージシャン

マーク・ノップラー: ボーカル、ギター
デヴィッド・ノップラー: リズムギター、バックグラウンド・ボーカル
ジョン・イルズリー: ベース、バックグラウンド・ボーカル
ピック・ウィザース: ドラムス

『コミュニケ』は、前作で確立されたダイアー・ストレイツ独自のクールで洗練されたサウンドを継承しつつ、バンドの演奏力の高さを改めて示した作品として、ファンや批評家から高い評価を受けています。特にヨーロッパでの爆発的な人気は、バンドの世界的な成功を決定づける重要な一歩となりました。

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