コメルサント

コメルサント（Коммерсантъ）は、ロシア語で「実業家」「ビジネスマン」を意味し、その名の通り経済界に影響力を持つ日刊全国紙です。しばしば「Ъ」と略されます。政治と経済のニュースを主要なコンテンツとし、ロシア国内で重要な情報源の一つとされています。2005年の時点で13万部以上を発行しており、その影響力の大きさが伺えます。

歴史

コメルサントは1909年に創刊されました。しかし、ロシア革命後のボリシェヴィキ政権下での検閲強化により、1917年に発行が停止されました。その後、約70年の時を経て、1990年にロシアの報道自由化の流れの中で復刊を果たしました。復刊を主導したのは、実業家であり政治評論家でもあったウラジーミル・ヤコブレフです。彼は社主としてコメルサントを再び世に送り出しました。

コメルサントの特徴の一つに、ロシア語の綴りがあります。ソ連時代よりも古い歴史を強調するため、近代ロシア語では使われなくなった「ъ」という文字を、末尾に付与しています。この「ъ」は、ロシア語改革で廃止された文字であり、コメルサントのロゴでは特殊な書体で強調されています。これは、コメルサントが持つ歴史的な重みを象徴するものでしょう。

1997年には、自動車産業やアエロフロートに影響力を持っていたボリス・ベレゾフスキーがコメルサント出版を買収しました。ベレゾフスキーは、当時のエリツィン大統領の側近グループ「セミヤー」の一員でした。当時、コメルサント出版は、日刊紙「コメルサント・デイリー」の他、政治誌「コメルサント・ヴラスト」、経済誌「コメルサント・ジェーニギ」、娯楽誌、そして後に当局の逆鱗に触れることになる10代向け雑誌「Molotok」などを発行していました。

2006年、ベレゾフスキーはコメルサント出版を、旧友であり経営パートナーであったバドリ・パタルカツィシヴィリに売却しました。パタルカツィシヴィリは、グルジアの果物缶詰加工会社や野党系テレビ局のオーナーでもありました。しかし、パタルカツィシヴィリは同年8月、コメルサント出版の株式100%をガスプロム子会社のガスプロム・インベストホールディング代表アリシェル・ウスマノフに売却しました。

2008年12月9日、コメルサントは英語での記事配信を停止し、公式ウェブサイトの英語版も閉鎖されました。しかし、イギリスではロシア語版の発行と配信が継続されています。

まとめ

コメルサントは、その長い歴史の中で、政治的、経済的な変化に翻弄されながらも、ロシア社会に影響を与え続けてきました。創刊から一時中断、そして復活を経て、様々な所有者の下で発行されてきたこの新聞は、ロシアのメディア史において重要な位置を占めています。


公式ウェブサイト（ロシア語）

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