コモンウェルスカップ:イギリス競馬界を彩る新たなスプリントG1競走
コモンウェルスカップは、
イギリスの
アスコット競馬場で行われる、3歳馬限定のG1競走です。2015年の
ロイヤルアスコット開催で新設され、従来の
イギリス競馬界には無かった、夏の3歳馬によるスプリント競走という新たなカテゴリーを生み出しました。この競走の創設には、
イギリスのスプリント路線の強化という明確な目的がありました。
スプリント路線強化の必要性
近年、
競馬界では6ハロン(約1207m)前後の距離を「スプリント」と呼び、マイル競走とは異なるカテゴリーとして認識するようになりました。しかし、ヨーロッパでは、他の距離に比べてスプリンターの層が薄く、その原因としてスプリント競走の体系的な不足が指摘されていました。特に、2歳時にはスプリント距離の重賞競走が数多く存在する一方、3歳になると重要なスプリント競走が少なく、優秀なスプリンターは2歳シーズン終了後に引退したり、海外へ移籍する傾向がありました。
この状況を打開するため、2015年からヨーロッパ全体でスプリント路線の強化が進められ、
イギリスでも新たなスプリントG1競走が創設されました。コモンウェルスカップはその中心的な役割を担う競走として位置付けられています。競走名も、2014年秋に「コモンウェルスカップ」として決定されました。同時に、秋の
ブリティッシュ・チャンピオンズ・スプリントステークスもG1に昇格するなど、
イギリス競馬界におけるスプリント路線強化への取り組みが明確に示されました。
コモンウェルスカップは、ヨーロッパ
競馬シーズン前半のクライマックスとされる
ロイヤルアスコット開催に追加されました。
ロイヤルアスコット開催は、
イギリスダービー終了後の6月中旬に行われ、「夏
競馬の始まり」として、多くの重要な競走が集中する伝統的な開催です。そこに、3歳馬限定の高額賞金(2015年当時、約6700万円)のスプリント競走が加わることで、開催全体の賞金総額は飛躍的に増加しました。
コモンウェルスカップの新設に伴い、既存の競走「バッキンガムパレスステークス」が廃止されました。この決定には、
ブックメーカーからの反発もありましたが、スプリント路線強化という目的を優先した結果です。また、従来3歳以上の馬が出走できたスプリントG1競走「ダイヤモンドジュビリーステークス」は、4歳以上限定に変更され、競走の棲み分けが行われました。
国際的な視点
コモンウェルスカップの創設は、国際的な視点からも重要な意味を持っています。
イギリス競馬界は、北米、アジア、オーストラリアなどから優秀な3歳スプリンターを誘致し、ヨーロッパの優秀なスプリンターの早期引退を防ぐことを期待していました。2012年にオーストラリアの
ブラックキャビアが
ロイヤルアスコット開催で優勝したことが、この国際的な交流を促進するきっかけの一つとなりました。特に、オーストラリアの高額賞金2歳戦を制した馬は、南半球の季節の関係で、
ロイヤルアスコット開催時には3歳馬として出走できるため、コモンウェルスカップへのオーストラリアからの有力馬の参加が期待されていました。
まとめ
コモンウェルスカップは、
イギリス競馬界のスプリント路線強化という明確な目的の下に創設された、歴史の浅いながらも重要なG1競走です。この競走は、
イギリス競馬界の改革、国際的な交流、そしてスプリント競走の更なる発展に貢献するものとして、今後の発展に注目が集まります。